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音楽、勉強・読書記録、日常の感想

コード進行・分析メモ  B.J Thomas「Raindrops keep fallin' on my head 」

 B.J Thomas「Raindrops keep fallin' on my head 」

 

バカラック御大の大名曲。歌詞も涙が出るほど素晴らしい。

アメリカンニューシネマ系の映画が好きな人は必ず知っているはず。


 

セカンダリードミナント以外は、特筆すべきダイアトニック外のコードはなし。

ただ、そのセカンダリードミナントの使い方が面白く、楽曲の肝となる。

 

Key In F

 

Intro
F - C - Bb - C

Ⅰ Ⅴ Ⅳ Ⅴ

 

言葉遊びのような朗らかなIntro。理論的な解釈は不要と判断。

 

 

Verse 1

F- FM7-F7- Bb

Am- D7- Am -D7 -Gm7×2- C7

 

最近分析したくなる曲に頻出のⅠ- ⅠM7- Ⅰ7 のクリシェから Ⅳの進行。

Mild High Club 、Velvet Underground でも見かけた。Ⅰのコードを伸ばしたいんだけど、そのままでは少し退屈かなと感じるので使用されていると解釈。また、次のⅣのドミナントになっているので、最終的には繋ぎとして機能している。

 

次は、Am- D7- Am -D7 -Gm7×2- C7つまり、Ⅲm Ⅵ-Ⅲm-Ⅵm- Ⅱm - Ⅴ の進行。

Ⅵがセカンダリードミナントとしてメジャー化されているにも関わらず、一度で解決せずに繰り返すのがとても面白い。そして、Gm7 が1小節長いのがポイント。

 

Verse 2
F- FM7
Bb- C- Am- D7- Gm7×2

Bb -C -Bb- C

 

 

Ⅰ -ⅠM7- Ⅳ- Ⅴ- Ⅲ- Ⅵ- Ⅱm-

Ⅳ- Ⅴ- Ⅳ- Ⅴ

 

 

Verse 1 に似た進行かと思えば、実はVerse 2 の導入である不思議な進行。

ⅠM7 のメロディに9thの音が入っていてオシャレ。

Ⅳ-Ⅴ はキメのようなもの。

 

 

まとめ・感想

ポップスとしてあまりに完成されていて、文句のつけようがない。最初にVerse1を提示した後、さりげなくストリングスが挿入されたと思えば、次のVerse2にはストリングスが消えているアレンジに不思議を感じる。曲自体はシンプルでもアレンジで少しずつ盛り上がりを演出する手法には何度聴いても感動がある。

 

この手の曲はベースがぼんやりとしか聞こえないので音全体の雰囲気を探って音をとる必要があるのでとても難しかった。職業作曲家のつくる音楽は、非常に難しいと思っていたけれども、想像したよりシンプルな曲で助かった。

 

 

コード進行・分析メモ Velvet Underground 「After Hours」

Velvet UndergroundAfter Hours



Velvet Underground は、音楽好き界隈の王様と言ってよい。

形式化された近年のロックにありがちな強烈なカタルシスを約束しない静謐な音楽は、飽きがくることがなく、噛むほどに味が染み出る。音楽好きの中で、果たして彼らを嫌いな人など存在するのだろうかとさえ思う。

 

骨となる部分はとてもシンプルな曲。Maureen Tuckerのヴォーカルが印象的な曲。

 非常に良い意味で、Verse 2のリズムが崩れる箇所に時代を感じる。DTMが曲のパルスを支配するようになった現代では、こうした崩し方は中々お目にかかれない。

 

Key In B♭

Verse 1

B♭ Gm Cm F

 

Ⅰ - Ⅵm - Ⅱ -  Ⅴ

言わずもがなのイチロクニーゴー。

ジャズとは違いトライアド中心なのでオシャレというよりは明るく、躍動感がある。

 

Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ のみで完結できるメロディなので、繰り返すことができる。

エンディングの以下の盛り上がりはその手法

I'd never have to see the day again
I'd never have to see the day again,
Once more
I'd never have to see the day again

 

 

Verse 2  

Ⅰ- Ⅰ7- Ⅳ- Ⅳm

B♭ - B♭7  E♭ -E♭m

 

Ⅰ7が鳴る箇所はどこか何とも言えない不思議な感じがする。Ⅰ7だからと言って、全てがブルース進行的には響かない。

この進行は偶然、Mild High Club の「Skiptracing」でも見られた。彼らの場合は、Ⅳm をトニック ⅠM に解決せずに、Ⅲm に解決し、そのまま4度進行で下降していた。ちなみに、そのⅠ-Ⅳm - Ⅲm -Ⅵm- Ⅱm Ⅴ はフリッパーズギターの「Groove Tube」のサビの進行でもある。

 

Bridge

B♭から半音で下降したかと思えば、Dm と AM を繰り返す謎の進行。

あえて補足する必要もないとは思うけれど、ダイアトニックコード的に考えるのであればAMではなく、Am♭5が正解。

Dmの時は、♭6度 - ♭7度 - ♭3度

AM の時は、1度-2度-5度 のメロディ

AMはドミナントのように機能しているのかもしれない。

DmはⅥmのダイアトニックコードで、ダイアトニックスケール(この場合エオリアン)から外れた音は出てこないので、素直に調性内のコードと解釈してもよいかも。

 

 

後は、Ⅵm - Ⅱ - V を使ってB♭に戻ってくる力技。

このBridge こそがVelvet Undergroundが凡百のバンドとは異なるところかもしれない。マイナーコードをメジャー化することで調性を不安定にする手法はビートルズなど、「サイケデリックロック」と呼ばれるバンドの曲によく見られる。

 

まとめ・感想

原曲のみでは不安な箇所があったのでLive版などを参照しつつ分析した。楽しい雰囲気の曲なので家族で歌うと良いかもしれない。ただ、歌詞を読んでいないので恋人や子供と歌う内容かどうかはわからない。個人的には「Candy Says」、Who Loves The Sun」、「Pale Blue Eyes」など、彼らの歌モノが好み。

 

The Velvet Underground

The Velvet Underground

 

 

 

 

コード進行・分析メモ Mild High Club 「kokopelli」

 Mild High Club 「kokopelli」

 

何故かヒップホップの“当たりレーベル” Stone Throw に所属するサイケデリックなバンド Mild High Clubのお気に入りの曲。アルバム全体を覆うダルさを分析したくなった。

1曲目の「Skiptracing」も非常に良い曲で分析したけれど、何となくこの曲にした。

 


Key in D♭

Verse 1

D♭M7 - Cm7♭5- F7♭9 - B♭m7-Fm7

 

DbM7が鳴っている時のメロディが特徴的。

M7から始まるアルペジオはオクターブ上のM7まで上昇し、6度の音に半音で下降する。M7から始まるメロディは幻想的で優しく聞こえる。また、微妙な半音階が調性を曖昧にすることで独特の浮遊感がある。

 

続くコードは、 Ⅵm に向かうツーファイヴ。F7はダイアトニック的に言えばマイナーになるところだが、続くコードのドミナントと考えて7th化されている。小難しい言葉で言えばセカンダリードミナント

 

 ツーファイブ、Fm7 - B♭7 を挟んで一気にE♭m7 に到達。

畳み掛けるように怒涛の4度進行。

 

ニーゴーサンロク(Ⅱm - Ⅴ7 -Ⅲm7- Ⅵm7)

E♭m7 A♭7  Fm7  B♭7

E♭m7 A♭7 -> Verse 1 に戻る

 

Ebm7 の4度から始まり短3度に着地し、次のコードのアルペジオ

同じくFm7の4度から始まり短3度に着地し、次のコードのアルペジオ

この繰り返しが非常に心地良い。また、セカンダリードミナント化したB♭7の長3度の音をなぞることでメロディのエモさが増していることにも着目。

 

 

まとめ

狙った訳ではないけれど、ミツメの「煙突」に引き続き4度進行の連発が出てきた。もしかすると、好みの進行なのかもしれない。

コード的にはとてもシンプルな曲だった。ただ、曲の顔となるメロディには少し捻りが加えてあり、そこが曲の印象を大きく変えているのだと思った。また、音色やリズムが与える印象の強さを再確認した。

 

「Skiptracing」のkey は B、今回分析したこの曲は D♭と、珍しいKey をよく使うバンドなのかもしれない。ギターやベースギターなどのロック的な楽器は勿論、管楽器的や鍵盤楽器などの楽器でも演奏しづらそうなkey なので、とても不思議な感じがする。

 

余談だが、ロックの曲は♯系のkeyが多く、ジャズの曲は♭系のキーが多い。

非常に単純な3コードの曲や半音下げチューニングを使用されている曲は例外として、ロックの花形楽器であるギターの開放弦を使ったコードを押さえやすく、それらのコードを鳴らしながら曲を作るので♯系のkeyが多くなるのだと思う。E G A C D などを適当に並べるだけでロックっぽくなる。Gとか、Cadd9 とかはロックギタリストが多用するコード。

 

対するジャズは、顔となる管楽器に合わせた結果だと思う。(雑な理由づけで申し訳...)

 

 

 

コード進行・分析メモ  ミツメ「煙突」

Verse 1

A - C♯m - D - D on E

Ⅰ -Ⅲ- Ⅳ  Ⅳ/Vのよくある形

 

終始感を弱めるためにドミナントの音をベースにサブドミナントのコードを乗せるのは常套手段。ⅣのコードのところでM7th の音を上手く使っているのがポイント。

 

 

Verse 2

導入前に 主音A からの下降フレーズが入る。

A G♯ F♯ E 

 

D- E - C♯m - F♯m- Bm - E - A 

Ⅳ- Ⅴ - Ⅲm - Ⅵm - Ⅱ m - Ⅴ - Ⅰ

 

 

ジャズや渋谷系の曲で頻繁に見られるオシャレ進行。

ドミナントからⅠに解決せずに、4度進行を連発するのはよくある手法。

メロディは上手く3度の音を使いつつ綺麗に繋いでいる。Ⅲmのところのメロディは、フリジアンスケールをm3から7♭まで下降して次のm3に繋いでいるのはジャズのようなフレージング。

 

 

まとめ

音楽理論を知らない人でも聴いていて「アレ、変だな」と思う箇所には、ノンダイアトニックコード(キーから外れた音)が登場している。この曲は聴いていて引っかかる箇所はないので、綺麗にダイアトニックコードを使っている。

 

余談ですが、「 fly me to the mars !!!」のシングルB面ヴァージョンは、アルバムヴァージョンとアレンジが大きく違う。シングルB面ヴァージョンでは、ドラムマシーンを使用していて、大々的にギターが導入されている。

 

個人的にはアルバムヴァージョンの方が圧倒的に良いと思う。シングルB面ヴァージョンは、ギターが鳴りすぎていて少しうるさく感じる。しかし、一般向けに豪華なアレンジを試みた結果かもしれないので、オタク的な意見かもしれない。

 

 

私は、絶対音感などは持っておらず、全て耳コピなので間違いがあるかもしれません。

 

 

 収録アルバムは以下。

eye

eye

 

 

 

 

マイルス・デイヴィスの歌

インストゥルメンタルヒップホップの伝説、DJ Krush があるインタビューで、「マイルスは自分のしていたことをずっと昔にしていた」と語っていた。

 

マイルスとの出会いは高校生の時。初めて聴いた時の印象は、中高音が耳に刺さるようで痛いという感じだった。恐らく当時使用した安価なイヤホンが原因だと思う。しかし、音楽を聴く人間としてマイルスから逃れられるはずもなく、So What に行き着いた。あの独特のモーダルな空気に馴染むまで時間を要したが、毎年必ず何度か聴くアルバムになった。ただ、今となっては、楽器を演奏する能力の乏しかったあの頃の自分は、雰囲気を楽しんでいるに過ぎなかったと思う。*1

 

ここ最近、楽器を比較的真面目に練習するようになり、ジャズの名手と言われるプレイヤーの演奏を分析的に聴くことが多くなってマイルスを部分的に理解できるようになってきた。

多くのジャズ系のミュージシャンは、音数が多すぎると感じる。加えて、複雑なコード進行の上で歌うことすら困難な複雑なスケールを使用するので、演奏からメロディの輪郭が見えてこない。大衆を踊らせていたスウィング・ジャズが、ミュージシャン同士の競い合いへと変容したジャズの歴史を鑑みれば当然の帰結かもしれないが、歌を好む自分の肌には合わない。

 

他方、マイルスは、作曲的な方法論でアドリブを取るのがとにかく上手い。マイルスは、トランペットを持った“歌の人”だった。極めて優れたヴォーカリストが口を開いた瞬間に聴き手を圧倒的するようなそれをトランペットで再現する。

聴いてしまえば簡単に思えるそれは、コード進行全体がクリアに見えていることは勿論、コード間の音の関係性を深く理解していないとできない離れ業だと言える。トライアドの音を中心に据えてコード感の提示を求めるジャズで、少ない音数で、コード間を縫うように美しいメロディを奏でることは本当に難しい。まして、それをアドリブでするとなると、想像を絶する難しさだと思う。

言うまでもなく、マイルスはそれを得意としていた。だからこそ、マイルスの音楽は、曲を「アドリブの素材」としてではなく、アドリブ部分も含めて全体を退屈することなく歌のように聴くことができる。

 

その考えに基づくと、マイルスがモードジャズに行き着く理由がよくわかる。

モードであれば、コーダルなアプローチであればテンションと言われる音でさえも自由にロングトーンとしても自由に伸ばすことができる。必然的にコードの制約を受けてしまうコーダルなジャズでは、歌いづらかったのだと思う。

 

マイルスの歌い方は、コードに対して何度でアプローチをしているといった分析をするだけでは見えてこない。それでは所謂ジャズ的なアドリブになってしまう。もっと根本的な歌の捉え方が必要なのかもしれない。

 

マイルスはジャズの人という共通認識があるが、自分自身のことをジャズミュージシャンではないと考えていたらしい。実際、常に“ジャズではない何か”を追い求めていたように見える。現在、本人の思惑とは異なる結果となってしまったが、彼の音楽的功績そのものが「ジャズ」と呼ばれるようになったのだから仕方がない。

 

あまりにも偉大なマイルス。未だ足跡や影さえも見えそうもない。

 

 

*1:そのようなニワカにも圧倒的な説得力で聴かせてみせるのがマイルスの素晴らしさ

真面目にギター入門したい人に向けた練習方針・方法

真面目な入門者・初心者の壁

世の中には、沢山のギター教本がありますが、自分自身色々と苦労させられてきました。初心者に向けて情報量が増えすぎることを嫌った結果と思われますが、巷に溢れる教本のほとんどは指の体操のようなものばかりで、音楽を理解するようにはできていないように思います。

音楽やギターを理解しないままに、それらの本に従って練習しても特定の曲やフレーズが弾けるようになるだけで指板を自由に使ってフレーズを考える力は身につきません。そういった事情を鑑みて、真面目な入門者・初心者に向けた記事を書こうと思いました。

 

到達点

この記事は、ただ誰々の〇〇と全く同じフレーズが弾きたいという訳ではなく、例えば、ある曲で自分なりのフレーズを考えたり、自分で考えたメロディにコードを付けられるようになることを目標としています。なので、コピーがしたいという方には向かないと思います。ただ、ギターと音楽への理解が深まるに連れて、耳コピ速度が飛躍的に上がることは約束します。

 

 

どう練習するか?

ギターの上達には、大きく分けて2つの練習が必要になります。

 

1つ目の練習

ギターと音楽を理解する練習です。勉強系の練習と言えば良いでしょうか。

 

2つ目の練習

1つ目で理解した内容を徹底的に反復して身体に染み込ませる練習です。

 

 

2つ目の練習は、徹底的に反復すれば良いだけなので、この記事では、主に1つ目の練習について書いていきます。

 

では、以下に入門者・初心者が身につけるべき要素書いていきます。

 

基本中の基本

 

1.指板の音名を覚える(特に6弦〜4弦)

 

色々な覚え方があると思いますが、トイレにでも貼って覚えましょう。

普段から弾く音を意識していると身体に自然に馴染んできます。最初から完璧を求める必要はないので、ゆっくりと覚えれば大丈夫です。

日替わりで「今日はミのフラット」などを決めて、指板上にある全てのEbの音を弾く練習をすると良いと思います。

 

2.ダイアトニックコードを理解する(Key in C でOK)

 

「なんだそれ?」と思われる方もいるとは思います。簡単に言うと、ドレミファソラシドとコードの関係と言えば良いでしょうか。キーに対する理解を深めます。

コードがどのように構成されるかを理解すれば、CM7#11 のようなテンションコードを自然に考える力が身につきます。

 

また、簡単なオンコードなど恐るるに足らず状態にもなります。

C on E とか何も怯える必要は無くなります。次の音との繋がりを考えてルート以外の音をベースに持ってきたに過ぎません。 

 

「実際の曲は音楽理論(キーなど)から外れた曲も沢山ある」みたいなことを言ってくる人は無視しましょう。キーという基盤があるから“外し”が効果的になるのです。

ギター・マガジン 最後まで読み通せる音楽理論の本(CD付き) (Guitar Magazine)

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3.指板上でのコードの5ポジションを理解する

 

ここでの説明は、非常に煩雑になってしまうので深入りは避けますが、ギターの指板上で音がどのように並んでいるかを理解します。指板を縦と横に横断してギターを理解できるようになります。

ギターの音の並びはとてもシステマティックなので、最初の壁を超えればあとは芋蔓式に理解できます。例えば、ドミソから構成されるCコードを覚えれば、ミの音を半音下げればマイナーになります。

 

理論的な支えがあると理解が深まるのでダイアトニックコードの勉強と並行させるのが良いと思います。

 

ギター教則本は、スケール練習を推奨していることが多いように思いますが、最初は徹底的にコードトーンを理解することが重要です。キーと対応させてコードトーンを理解すれば、自然にテンションがわかるようになります。複雑なコードにも恐れる必要はなくなります。 

私が使った以下の本をオススメです。

 

 

基本と簡単な応用

「基本中の基本」を理解した後にする練習です。つまり、複合的な練習です。

今は、「お前何言ってるんだ?」と思われると思いますが、気にしないでください。順を追っていけば自然にわかるはずです。

 

以下はセットです。

1. 5ポジションでダイアトニックコードのコードトーンを追う練習

2. 5ポジションでダイアトニックコードのスケールを追う練習

 

指板を自由に把握するため音の練習です。様々なポジションないし同一のポジションで弾ききる体力が身につきます。

 

3.マイナー系のダイアトニックコードを理解する

 特にポップスの分野においてですが、同主調からのコードの借用が極めて一般的に見られる手法です。そして、それが楽曲のポイントになっていることは多々あります。いわゆる“外し”です。

OasisDon't Look Back In AngerBeatlesIn My Life は、長調(メジャー)の曲にも関わらず、どこか哀愁が漂っているような雰囲気があるのは短調(マイナー)から音を借用しているからです。借用和音やモーダルインターチェンジと言ったりします。

 

 

大体この辺りまでくれば、複雑なジャズやフュージョン以外の曲に関して、歯が立たないということはなくなると思います。他にもモード・セカンダリードミナント・アッパーストラクチャートライアド・ポリモーダルなど沢山の難しい手法がありますが、自分の必要に応じてその都度補完してゆけば良いと思います。

 

音楽は言葉のような側面があります。例えば「ら抜き言葉」のように「正しくない」言葉とされていても、実際にそれを使って意思疎通ができるから問題ないという感じでしょうか。実際の聞こえ方、響きがよければなんでもアリです。

例えば、Key In C でセカンダリードミナントではないDメジャー(普通はDm)が登場することもあります。

 

理論と整合が取れないコードが出てきてもそれも音楽の味だと考えて、大きく構えましょう。“外し”はあくまで“外し”なので、音楽の基本を理解していれば大半の曲の大部分は押さえられるので安心してください。

 

4.覚えた道具を使ってひたすらコピー

 

一番楽しいところです。基礎的な理屈を知っているだけではあまり楽しくないので、好きな曲をひたすらコピーして分析しましょう! 自然に理論と実践が結びつくようになります。

 

2つ目の練習(徹底的な反復)についての補足

 

誰でもすぐに上達できる練習方法は存在しません。「自分に足りていないものは何かな?」や「どうすればうまく覚えられるかな?」と工夫しながら上達してゆくものだと思います。

 

上に書いた要素を体に染み込ませるだけでも2年くらいはかかると思います。

とても大変だと思いますが、将来的に“コピー専門ギタリスト”になることを回避できますし、少し分析したい曲に出会った時に楽譜を買う必要なくなるなど沢山のメリットがあります。インディーズであれば、そもそも楽譜がないものも沢山あるので、そういった曲をコピーすることもできるようになります。自分なりにフレーズを考えたり、コード進行の繋がりを意識しながら様々なポジションでコードを考える能力も身につきます。

 

また、曲の理解という点でも大きな変化があります。

例えば、Radiohead Creep は、メジャーとマイナーを自由に行き来していて、メロディも間を縫うように非常に巧みにできていると理解できるようになります。

他にも、「なるほど、この曲はドミナントが沢山出てくるから劇的でスケールが大きい雰囲気がするんだな」のような分析できるようになります。

 

必要なことは挙げていけばキリがないですが、以上に述べたことはギターを扱うために最低限必要なことだと思います。身に付くに連れて自由にフレーズが考えられるようになります。また、理論的なところは音楽の基礎中の基礎なので、ベースラインなど、他の楽器のフレーズを考える際にも当然役に立ちます。

 

 

あくまで個人的にですが、以上のようなメリットを考慮すれば安い投資だったと思います。私も、これを読んで意欲的になった皆さんと一緒に練習頑張ります。

現代最高のベーシスト MonoNeon とは?

MonoNeon の衝撃

 

MonoNeonは、ベースの歴史を変える可能性のある存在です。*1Jimi Hendrix や Jaco Pastorious と同様、好きなジャンルに関係なく一聴の価値はあるでしょう。安易に天才という言葉を使うべきではないですが、MonoNeonは間違いなく天才と言って良いと思います。*2

 

しかし、日本語で書かれた情報があまりにも少ないので、この記事を書こうと思いました。幸いにもアメリカでは既に注目され始めているようで、Wikipediaやインタビューが充実しています。この記事は、それらを参考にして書きます。一番下に参考資料としてまとめたので興味を持った熱心な音楽オタクは是非読んでみてください。

 

まず始めにMonoNeon の面白さを箇条書きにします。

 

・名前の通り蛍光色の服ばかり着てる

・コード進行が激ムズで有名なSteely Danの曲を平気で弾きこなす

・D'Anjelo と J Dilla が開発した“ヨレたビート”を出せる現代的ベーシスト

・変態系ジャズ・フュージョン系ギタリストの大家David Fiuczynski*3と活動

微分音(以下で解説)を鳴らせるベース・ギターを使って演奏することがある

・Princeの生前最後のベーシストとして選ばれていた

シュールレアリスムダダイズムミニマリズム・アメリカ抽象表現主義など、芸術から大きな影響を受けている。(Ellsworth Kelly・Frank Stella ・René François Ghislain Magritte・Marcel Duchamp・Mark Rothko・ Jackson Pollock・ Salvador Dali・Max Ernst などを好むようです)

 

最後に彼のインタビューからの抜粋です。

 

One of my primary goals is to possibly combine the sounds of John Cage and Mavis Staples, Iannis Xenakis and Bobby Womack, and Stockhausen and Albert King, etc. in my bass playing and compositions.

MonoNeon 

僕の最重要の目標の一つは、作曲やベースの演奏の中で、ジョン・ケージ(現代音楽の伝説)、メイヴィス・ステイプルズ(R&B・ゴスペル歌手)、クセナキス(著名な現代音楽家)、ボビーウーマック(ソウル・R&Bの凄い人)、シュトックハウゼン(世界初の電子音楽作曲家)、アルバート・キング(伝説のブルースギタリスト)の音を可能な限り組み合わせることだ。

Interview with Dywane ‘Mononeon’ Thomas Jr by Kilian Duarte

 

 

多分、上に名前が出てきたミュージシャンや芸術家を知っていれば知っているほど、ワクワクすると思います。これで面白くないミュージシャンであるはずがないです。

余談ですが、インタビューが面白いミュージシャンは音楽も面白いことが多いです。

 

MonoNeonの音楽

これを聴けば彼の凄まじさがわかるはずです。

 

何が凄いかを解説するまでもなく“なんか凄い”感が伝わったのではないでしょうか。違和感の正体は、彼が半音をさらに細かくした音(Microtonal tone(微分音))を鳴らすことができるベースを弾いていることです。彼の音楽的な表現には、1オクターブを12分するだけでは足りないということですね。これはJacob Collier にも共通する要素です。簡単に説明すると、一般的な五線譜の表記法では書けないほどに細かい音を弾いています。

ここで強調したいのは、MonoNeonの演奏からは、下手な現代音楽家にありがちな技術がないことを誤魔化す“反則レスラー”感が全く感じられないことです。MonoNeonの演奏能力は確かな基礎力に裏打ちされています。*4

 

彼のユーモアの側面からもひとつだけ紹介しておきます。


この動画のように人の声にベース・ギターを当てる動画をMonoNeonはよくあげています。(大量にあるので飽きます)

一般的には音楽的ではない人の話し声からメロディやグルーヴを見つけ出すのは難しく、何テイクも録り直すらしいです。

 

作曲もします。何から何までMonoNeon です。

奇妙なイントロは、微分音のせいでしょう。

再生数が4万回程度と少なすぎます。人類の損失です。(2018年4月27日現在)

 

 音源は挙げて行くとキリがないのでこのあたりにしておきます。

 

経歴+補足的情報 

 

以下にWikiやインタビューから得た彼の情報を箇条書きにします。

 

・MonoNeonの本名は、Dywane Thomas Jr.と言います。

・1990年の8月にメンフィスで生まれた。

Youtubeでの活動、故Princeが亡くなる直前に仕事をしていた一人

・Ne-Yo の4枚目のアルバム『Libra Scale』に参加している。(どの曲かは不明)

 ・音楽家の家庭に育ち、4歳の頃からベースを弾いている。父親はベーシスト、祖父はジャズピアニスト

 ・小さい頃は、レッスンとは無縁だった。

・教会のピアニスト(オルガニスト)から音楽的に多くのことを学んだ

 ・11歳〜12歳頃 The Bar-Kays と共に、14歳の頃には、South Soul Rhythm Section で演奏活動をしていた。South Soul というのは、メンフィスにある Stax Music Academy という夏期講習などを通じて音楽教育を行っている学校に通っている若者たちで結成されたグループ。

 ・Berklee音楽学校 に入学し、そこに勤めるDavid Fiuczynskiと共演。Berkleeを出た(恐らく自主退学)2010年には、David FiuczynskiとロサンゼルスのBaked Potato*5で活動。

・若過ぎてあまり輪に入れず、Berkleeでの生活は楽しくなかったらしい。本人曰く、人間を磨く時期だったらしい。この時期に蛍光色の服を着るようになった。

・右利きだが、右利き用のベースを逆さに持って左手でベースを弾く。特に意識することなく4歳の頃からこのスタイルで弾き始めたらしく、普通には弾けない。強いベンド(チョーキング)ができるので本人も気に入っている様子。

 ・Marcus Miller はベースマガジンでのインタビューで、MonoNeonのベースは、サザンソウル・ブルース・ファンクの影響があると指摘。

 ・Microtonality に興味を持ったきっかけはDavid Fiuczynski。

 ・ギターも弾ける。当然、Microtonal tone が鳴らせるギターも弾く。

 ・2015年にPrinceがMonoNeonをネットで発見し、Paisley Parkに誘った。そして、Judith Hill*6のために作ったバンドのベーシストとしてMonoNeonは働き始め、後にPrinceのバンドでもベースを弾くようになった。

・Prince との面白いエピソードは、ある日スタジオで、MonoNeonが携帯を出していたらPrinceが「僕は携帯アレルギーだからそれを外に置いてきてくれないか」と言ってきたこと。

・Princeとのセッションでリリースされているものはこれのみ。

Ruff Enuff / MonoNeon


Pete Rock は、MonoNeonのファン。ニューヨークのBlueNoteで共演したらしい。

 

個人的感想

MonoNeonを初めて聴いた時、Chris Dave、Mark Juliana、Jacob Collier を聴いた時と似た衝撃を受けました。「ああ、人類はここまで到達したのか…」という感じです。

 

上に挙げたミュージシャンと同様に、MonoNeon も既存の音楽的手法に頼るだけではなく、自分で音楽の可能性を拡張しようとしているのだと思います。その方法のひとつが微分音なのかもしれません。

MonoNeonと同じく新世代で、彼に負けず劣らずの才能を持つJacob Collierも微分音の使い手です。ポップに聞こえる音の中に微分音を混ぜる手法が巧みです。5分30秒あたりからゾクゾクしませんか?

楽譜に落とし込んだ人はいかれてる。

 

シェーンベルクの12音技法のような難解な手法は大衆化しませんでしたが、微分音が大衆化する時代が到来すれば面白そうです。もしそうなれば、音楽新時代の幕開けかもしれません。

 

MonoNeon は派手な外見やYoutubeの動画から何となく「イロモノ」的な印象を与えてしまいそうですが、実際は非常に練習熱心で真面目な音楽家です。

彼が掲げる “MonoNeon art manifesto”からは、Ivan Wyschnegradsky や Julián Carrillo といったMicrotonal の先人への敬意と、彼自身で新たな分野を切り開こうとする野心が読み取れます。

 

 

彼の新しいアルバムも素晴らしいです。ビートミュージック、ヒップホップ、現代音楽、ネオソウル、ローファイ、色んなものが混ざっています。Ras G が好きな人はハマりそうな気がします。

個人的に、今年のベストアルバム入り間違いなしです。

聴き慣れることが勿体なく感じてしまい、数回しか聴いてないですが。

 

 

参考資料

Dywane Thomas Jr. - Wikipedia

 

Interview with Dywane ‘Mononeon’ Thomas Jr by Kilian Duarte

 

http://blog.kexp.org/2016/05/06/interview-with-bassist-mononeon-one-of-the-last-people-to-play-with-prince/

 

Guitarist MonoNeon On Missing Prince, Being Inspired By Cardi B & More [Interview]

*1:個人的にはもう既に変えたと思ってます

*2:念のため言っておくと、彼が努力をしていないとは言っていません。

*3:上原ひろみの『Time Control』のギターの人と言えば馴染みがあるかも

*4:実はBandcampにある最初期のアルバムはいわゆる現代音楽って感じ

*5:LAで非常に有名なジャズやフュージョン系の人がライヴをするクラブ

*6:This is it』 でMichael とデュエットしてる女性、『バックコーラスの歌姫たち』にも出演してる。