捏造日記

電脳与太話

今年聴いた音楽ベスト+ベストアルバム2018

 

今年は、現行ものはほとんど聴きませんでした。 つまみ食い的にMitski、BTS、Snail Mail、Lotic、Objektなどの流行り物(?)に手を出したりしてみたものの、どうにもしっくりこない。いつのまにか耳が慣れてしまった海外インディものより、エーチャン(E.Yazawa)が新鮮で胸に刺さる。そんな1年でした。

 

Spotifyを活用して、記事と連動したプレイリストを作成しておきました。

2018 My Favorite Songs

https://open.spotify.com/user/parappathe/playlist/22KorXQi2dSge88XldiaDy?si=1KRBO8FnQUeEiUlCXjUe_g  

これを聴いてもらえると色々わかると思います。 今年追加したものの中から適当に放り込んだのでリスト外の曲もあります。正直、「この曲リストに入れ忘れてた」みたいなものが大量にあって困りました。

 

ふと気付いたことですが、自分は、音楽を選ぶにあたって、なにかと仮想敵を想定する癖があるようです。例えば、アンチ邦楽、アンチメジャー、アンチインディーズ至上主義、アンチ新しい至上主義、アンチ名盤主義、アンチ洋楽などが挙げられます。そうした否定(アンチ)をエネルギー源にしてきたような気がします。理由はおそらく、意識の根底に「自分が気持ちがいいと感じるものばかり選んでいると音楽の幅が狭まる」という考えがあって、かつての自分を意識的に否定して新たなものを入れるためのスペースを用意しているからだと思います。

 

自己精神分析もほどほどにして本題に移ります。 

今年は、適当な理由を付けて後回しにしてきた日本の音楽を柱に据えて音楽を聴きました。自分が知らない作品を聴くことは勿論、自分が過去に聴いていた作品の洗い直しもしました。結果、「オールジャンルなんでも聴きますよ」的なことを言う中高生が作りそうな散らかったリストが出来上がりました。大変に恥ずかしいです。

しかし、「これを聴いてる俺って趣味良くない?」といった自惚れは、音楽自体の価値とは関係のないことです。有名どころのJ-Popなんぞは早めに卒業して、David Bowie、Can、Brian EnoVelvet Underground*1や、海外インディとその周辺から影響を受けたような音楽を聴いていたら「趣味・センスがいい」といった価値観や風潮に抗って「J-Pop最高です!」と高らかに宣言したいです。今となってはどことなくオシャレアイテム感の漂うシティポップのように、J-Popにオシャレウェーヴが到来する日もそう遠くないはずです。最先端を先取りしていきましょう。

 

冗談はさておき、日本の音楽を再考するために「今年注目のおすすめ邦ロック100選」のようなものをひたすら聴く作業をしたりもしました。心理的負担は大きく、理解することができなかったものも多数ありましたが、日本の音楽に対する理解は深まりました。文字にすると当たり前に思えますが、多くの場合、“折衷的”に海外の音楽を取り入れようとしたところに日本音楽固有の魅力が生まれることを再確認できたことは大きな収穫でした。“折衷”は大きなポイントです。その意味で、海外音楽に強く影響されたにも関わらず、その影響を直接的に表現(英語で歌うなど)することなく自らの表現を模索し、日本語で歌うことを選択したゆらゆら帝国はっぴいえんど、2枚目以降のフリッパーズギター*2フィッシュマンズ*3などの偉大さが身に沁みました。彼らの音楽は“海外の何か”で代替することのできない日本の音楽です。

ちなみに「ファ ファ ファ ファ ミンゴ*4」は全然悪くないと思いました。今風のJ-Popにスパニッシュの要素を上手く加えていることもそうですし、歌詞もありがちな表現の羅列ということもなく、声ネタの使い方にも嫌味がなく、3コーラス目のAメロでの演歌的歌い回し(こぶし)も見事だと思いました*5

全く理解できない音楽は、なにかとハイハットの裏打ちを入れたがるサブカルの香りを漂わせたマイナー風メジャー系バンドや、薄っぺらい仲間意識を共有していそうな元気と感謝の押し売り系バンドに多かったです。ジャンルは様々でしたが、それらに共通していたのは、悪い意味でルーツが見えないことでした(良い意味でのルーツが見えないは最高の褒め言葉)。音に深みが感じられないとも言えます。過去を参照することなく、ただ己から出る音を鳴らしたと言えば聞こえは良いですが、それで上手くいくのは青葉市子*6ほどに並外れた才能がないと難しいでしょう。ただ、ルーツが見えていたら良いというほど単純な話でもなく、ルーツからの影響があからさまで「お前はそれをオリジナルと言い張るのか?」と感じる場面も多々あるので難しいところです。月並みですが、ルーツと自分の表現のバランスが重要なのでしょう。

 

前置きが長くなりすぎました。 2018年によく聴いた音楽リストは以下です。

 先ず注意事項をざっと書きます。

 

  • リストは、2018年リリース以外のアルバムも含みますが、リスト上部に2018年リリースでまとめました。実質それが2018年のベストアルバムです。
  • 表記は基本的に、アーティスト名『アルバム名』「曲名」で統一してあります。
  • 順序による重み付けはありません(順不同)。
  • アルバム名を書いてないアーティストは、基本的に曲単位では良かったことを意味しています。その他の場合は雰囲気で察してください。 
  • 特に気に入っている作品には「☆」を付けてあります。
  • リストの最後に、今年のベスト中のベストを選びました(2018年縛りなし)
  • 選考理由を言語化できている作品には脚注を使ってコメントを付記しました。長いものから短いものまで色々。思いつく限りの余計なことも書きました。

 

2018年ベスト

Altin Gun ☆『On』「Goca Dünya 」*7

Thought Gang ☆「A Real Indication*8

呂布カルマ 『SUPERSALTY』☆「ヤングたかじん」*9

安東ウメ子『Ihunke』(再発)

空中泥棒 ☆『Crumbling』*10

Michael Seyer『Bad Bonez』「 Show Me How You Feel (Eros)」

 IU(아이유) _ 「BBIBBI(삐삐) 」*11

Cornelius ☆「Audio Check Music」*12

Scott Gilmore ☆「Two Roomed Motel」(アルバムは来年リリース)

Janelle Monáe 「Make Me Feel 」*13

Ekiti Sound 「 Ife 」

Spiritualized  「I’m Your Man

Blood Orange & Yves Tumor  「Smoke (feat. Ian Isiah) (Remix) 」

Viagra Boys  「Sports」 *14

ENDRECHERI(堂本剛)☆「HYBRID FUNK」*15

 

歴史系

※この区切りは、情報を書かないと理解できないと思うので、脚注ではなく、そのまま簡単な解説を付記します。

 

Miss Kittin & The Hacker 「Frank Sinatra」(1982)

Electroclash というジャンルの代表曲。シンセの入った地下系インディポップの一つの源流と感じました。

 

The Last Poets 『At Last』 「The Courtroom」

初期ヒップホップグループ。1973年にこの音が鳴らされていたことに衝撃を受けました。。The Sugarhill Gang は1979年です。

 

John Field『Field:Piano Music Vol.1』「Nocturne No.5 in B-Flat Major」

ノクターン夜想曲)の創始者でもある19世紀の作曲家です。ショパンが巨匠中の巨匠であることは論を俟たないですが、音楽にはルーツがあることを改めて感じました。

 

Judus Priest 「Let Us Prey/ Call For The Priest (1977年)」

※選考理由がやたらに長くなったので別記事にすることにしました。

概要だけ述べておきます。

1977年、音楽的な意味では、Judus PriestはSex Pistolsなどのパンクロック(とりわけUKパンク)よりも「ロックの破壊者」でした。“ブルースからの脱却”を基調として、ロックンロールとそこから派生したロックを検証します。そして、パンクロックよりもヘヴィメタルの方が遥かに「ロックの破壊者」だったという結論を導きます。

 

1960~2017年

Howie Lee 『Mù Chè Shān Chū 』Cloud Lamps 」

Shye Ben Tzur Jonny Greenwood and The Rajasthan Express  ☆『Junun』 「Hu」*16

Stella Jang ☆「 (소녀시대) Girl's Generation 」☆「Dumped Yesterday」 *17

BANE'S WORLD 「you say i'm in love」*18

Audrey Hepburn「Moon River」*19

PREGNANT 「How Does It End? 」*20

☆60年代以前

*21

Léo Marjane 『Léo Marjane』

Blossom DearieBlossom Dearie

Lulu Jackson

Julie London『Julie Is Her Name(1955)』「I'm In The Mood For Love」

Danai 「 Htes To Vrady」

 

日本の音楽

松浦雅也パラッパラッパー2 オリジナルサウンドトラック』「 Toasty Buns」*22

Satoh Ryoko 「風まかせ(1973)」 詳細不明(discogsにも情報なし)

矢沢永吉 『EIKICHI YAZAWA LIVE DECADE 1990-1999』

☆「時間よ止まれ」「アリよさらば*23

☆河名伸江『のぶえの海』*24

SUPER BUTTER DOG 「FUNKY ウーロン茶」*25

椎名林檎 『無罪モラトリアム』『勝訴ストリップ

東京事変 『娯楽』*26

美空ひばり 『美空ひばり特選集』「みだれ髪」港町十三番地

☆喜納昌吉&チャンプルーズ 「 ハイサイおじさん」*27

花澤香菜 「恋愛サーキュレーション」(作曲者:神前暁)*28

神前暁  「もってけ!セーラーふく*29

細野晴臣 『TROPICAL DANDY』『HOSONO HOUSE*30

LAMP 『ランプ幻想』*31

hide with Spread Beaver  ☆「ピンク スパイダー」*32

Fishmans 『Neo Yankees'Holiday』「Smilin'Days Summer Holiday」

田中秀和 「Punch☆Mind☆Happiness*33

ストレイテナー  「KILLER TUNE」*34

Seira Mirror 「 Prince don't doubt」 *35

☆OORUTAICHI   「FUTURELINA」

☆ウリチパン郡   『ジャイアント・クラブ』「アトランティス」

坂本慎太郎 「死者より」

☆Plus-Tech Squeeze Box 『cartooom!』Dough-nut's Town's Map」*36

☆DJみそしるとMCごはん 『ジャスタジスイ』「缶詰ロワイヤル」「冷凍まんじゅう」*37

☆加山雄三 feat. PUNPEE「お嫁においで 2015」*38

☆FLYING KIDS 「毎日の日々」*39

面白いと感じたが、今の自分の耳では評価ができないと感じた人

INO HIDEFUMI 「奇蹟のランデヴ」

John Natsuki 「全部大嫌いだな」

星野源全般 「Pop Virus」  Snow Men」*40

Jacob Collier 「 With The Love In My Heart 」*41

 

今年のベスト

 

1. Danai 『As Erhosoun Gia Ligo (Authentic 78 rpm Recordings 1946-1957), Vol. 2』

「Htes To Vrady」

Danaiはギリシア出身の女性で不思議な経歴の持ち主です。音楽活動と並行して、チリの大学でギリシア民俗学や音声学の講師として働いていたり、チリ人のノーベル文学賞受賞作家、パブロ・ネルーダ*42と個人的な交友関係にあり、スペイン語で書かれた彼の詩をギリシア語に翻訳する作業を担当したなど、音楽よりも翻訳者としての仕事の方が有名だったようです。音楽的には、ギリシアの伝統音楽に凝っていたとのことです。どことなくシャンソンの香りが漂うのは、彼女がフランスで育ったからでしょうか。アルバムに収録されている「Misirlou」は聞き覚えがあると思うのですが、東地中海の伝統的な歌らしいです。Dick Daleにカヴァーされたヴァージョンが、Black Eyed Peasの「Pump It」にサンプリングされています。

 

 

2. Dywane "MonoNeon" Thomas Jr.『I Don't Care Today (Angels & Demons in Lo-Fi) 』 

動画の曲はアルバムで唯一の箸休め的な曲です。

年に数枚あるかないかの「一度に全部聴くの勿体ないから置いておこう」と思わされた1枚です。大半が1分〜2分程度の曲で構成されたビート集のようなアルバムで、Robert Glasper以降のジャズ、J Dilla以降のヒップホップ、D Anjelo以降のR&Bフュージョン、現代音楽が交雑し、音質はローファイ志向という強烈なニオイを発する音楽ばかりが収録されています。一貫してMonoNeonとしか形容できない音の洪水に最初はかなり面食らいました。今でも通しで聴くと相当疲れます。しかし、初めて口にした時は「リピートはないかな…」と思ったにも関わらず、クセが強く代替となりうるものが存在しないため、その強いクセを求めて再び足を運んでしまう二郎系のラーメンのようなアルバムです。

彼の複雑な音楽を聴く度に、ノイズミュージックの創始者、Luigi Russoloの言葉を思い出します。大意は「音楽の複雑化は、ノイズへの接近である」です。

Today music, as it becomes continually more complicated, strives to amalgamate the most dissonant, strange and harsh sounds. In this way we come ever closer to noise-sound. — Luigi Russolo The Art of Noises (1913)

(amalgamate は、「 2つ以上の物を混ぜ合わせて一つにする」を意味する動詞)

 

 

3.椎名林檎無罪モラトリアム』+「すべりだい(デビューシングルB面)」

 

周囲を見ていて、この手の有名どころは、音楽の知識量に比例して「卒業」する人が増える傾向があるように思います。自分にも確かにそのようなきらいはありましたが、ポップスにおける実験性を理解してからは、真っ直ぐに受け止められるようになりました。

椎名林檎は今年大きく評価を改めた1人です。『無罪モラトリアム』初めて聴いたのは中高生の頃だと思いますが、その頃とは全く異なる音楽として耳に入ってきました。彼女の音楽からは、オルタナティヴロック、シャンソン、ジャズ、歌謡曲など、とても豊かな音楽的背景を感じます。そして、そうした多様な音楽を自分のフィルターを通し、すべて“椎名林檎の音楽”の材料にしています。月並みですが、信じられない才能だと思います。特に彼女の曲は和声への拘りが見られるのですが、煩雑になるので分析はしません。代わりに彼女の発言を引用します。

自分は旋律(メロディ)と和声(ハーモニー)の関係性にこそ常に関心を持つべきだと思っている。アレンジが違っても成立するよう、例えばスーパーなどでかかるMIDI音源のインストのようにまっさらな状態で聴いた時にいかに光るものを書いておくかが自分にとっては大事だと思っているので、ビート音色に触発されてサウンドの方から組み立てていくアプローチは極力しないようにしている。

 

意味不明な歌詞の多い彼女ですが、デビューシングルB面(本人はA面を希望ていた)「すべりだい」では、日常的題材を少し違った角度からフレームに収める優れた詩人としての一面を感じさせます。交際している(していた?)男性に対する恨み節を歌い、曲の最後をこう締めくくります。

許されるなら本当はせめて すぐにでも泣き喚きたいけど
こだわっていると 思われない様に右眼で 滑り台を見送って
記憶が薄れるのを 待っている Ah… Ah… Ah… 

 

 

4.美空ひばり美空ひばり特選集』

美空ひばりは、生前最後の歌唱映像の冒頭で、今一番愛しているものについて話しをします。当然、息子のカズヤと言うと思いましたが、予想は外れました。彼女は「もちろん、それは歌ですね」と即答しました。笑えるような笑えないような話です。

美空ひばりはとにかく歌が上手いです。ピッチ、リズム、ビブラートが完璧であることは当然として、多彩な声色の全てが美空ひばりという歌い手の下で統合され、曲中で一片の無駄なく機能していることに驚かされました。

リンクの「みだれ髪」は、日本歌謡界の伝説、船村徹による作曲です。この曲には、特別な逸話があるので簡単に紹介しようと思います。

美空ひばりは当時入院中であり、彼女の体調は限界に近付きつつありましたが、船村徹に「先生、次の曲は手加減なしでお願いします」という主旨の手紙を送りました。そして、その手紙が「彼女の体調を考慮して歌いやすい曲を提供しよう」と考えていた船村徹を一変させました。結果、船村徹は「日本の歌の粋を結集させた曲を書こう」という決心に至り「みだれ髪」は誕生しました。実際、「みだれ髪」は曲の一番の盛り上がり(サビ)の部分で、美空ひばりが苦手としていた裏声が躊躇なく使われている挑戦的な曲です。また、レコーディングも少し特殊で、歌とオケの同時録音でした。当時の常識では何度も歌い直せるようにオケと歌は別録音が基本だったようですが、「歌は真剣勝負」という美空ひばりの考えのもと同時録音に変更されました。レコーディング本番は、わずか2テイクで終わりました。

 

5.Lulu Jackson  『Before The Blues, Volume 2 (1996)」「You're Going to Leave the Old Home, Jim! (1928年)」 

1950年代以前の音楽を掘っていた時、コンピレーションに収録されていて出会いました。声、演奏、曲、歌詞、音質など、文句の付けどころがないです。息子を想う母の気持ちが綴られた歌詞が印象的で、読むたびに感傷的な気持ちにさせられます。

彼女の情報は検索してもほとんど出てこないのでわかりませんでした。
歌詞の冒頭の抜粋だけ置いておきます。

There you're going to leave the old home Jim, today you're going away
You're going among the city folks to dwell

Said an old grey haired dead mother told her boy one summer day
If your mind made up that way I wish you well

Your old home will be lonely, we'll miss you when you're gone
The birds were singing sweetly where you're not nigh

 

 

6. Léo Marjane 『Léo Marjane』「En Septembre Sous La Pluie」


Léo Marjaneは、30年代~40年代にフランスで活躍した歌手です。当時のフランスはドイツとの関係が厳しく、ドイツ人の頻繁に出入りする場所でよくライヴをしていた彼女は、国民からの反感を買い、隠遁生活を余儀なくされたこともありました。その後、歌手活動を再開することはできたようですが、かつての輝きを取り戻すことはなかったとのことです。

 

7.安東ウメ子『Ihunke』



後輩に「最近日本の音楽を掘っている」という話をした時、“押し売り”されました。あまり詳しくは調べていませんが、アイヌの音楽家として著名な方のようです。略歴はウィキがあるのでそちらを参照してください。ウィキ情報ですが、タイトルになっているInunkeという単語は、アイヌ語で子守唄を意味する言葉で、その時々の気持ちを即興的に歌うことが多いようです。また、安東ウメ子は、伊福部昭(ゴジラの作曲で有名)とも交友があったようです。他には、坂本龍一が、「記憶に残る世界のミュージシャンを 2 人あげるなら、そ の 1 人は日本の安東ウメ子である」とラジオで発言していたとの記録を目にしました。*43

こういった音楽を文化から切り離してただ音として消費することには抵抗があるので、個人的に少し勉強しようと思っています。


8.松平頼則 『日本の作曲家 21』「 南部子守歌を主題とするピアノとオルケストルの為の変奏曲から」

日本の音楽を調べている際に出会いました。

無調の混沌を感じさせたかと思えば、日本的情景を喚起させる美しいメロディラインが浮かび上がってきます。その調性の外し方も特徴的で、大きく外すこともあれば、メロディラインだけを僅かに外すこともあります。その緊張と緩和のバランスは、今まで自分が知っていたクラシックとは全く異なるものでした。そしてなにより、伝統的な日本の音楽とクラシックと現代音楽(狭義の)の融合に思わずうならされました。

 

あるブログに松平頼則の素晴らしい紹介文があったので引用します。

 「日本を代表する作曲家」と問われれば勿論私も武満徹であると答えるだろう。しかし、真に西洋音楽と日本の伝統音楽を高度な作曲技法で模索した作曲家という点では松平頼則が相応しいであろう。その存在は孤高である。チェレプニン、ドナトーニ、ベリオ、ブーレーズルトスワフスキ、ランドフスキといった錚々たる作曲家から激賞され、カラヤンが振った唯一の日本人作曲家であり、ロリオ、高橋アキ、野平一郎(ピアノ)、ガッツェローニ(フルート)、奈良ゆみ(声楽)といった名演奏家が演奏録音したにも関わらず松平の名を今演奏会に見つける事はほとんどない。戦前の新古典派的な作品ですら演奏される機会は稀である。
「松平頼則」 より

 

ベストは以上です。

 

冒頭で書いた通り今年は主に日本の音楽に寄せて色々と聴きましたが、質も量もまだまだ足りていないことを実感しています。どのような人が歌っても等しく美しく、それでいて固有の民族性を感じさせる岡野貞一の「故郷(Frusato)」のように圧倒的な強度のある作品、そんな音楽を来年は探していきたいです。童謡、長唄、追分、謡曲とかになるのかな?


 

 

 

*1:どれも好きだよ!

*2:『ヘッド博士の世界塔』は神

*3:このいかにもな並びを見るだけでも恥ずかしい

*4:元ネタわからずの人は、この文字列をyoutubeで検索すると出てくるよ!

*5:ここまで褒めたけど好みかどうかは別。アイデアを面白いと思っても好きになるかは別

*6:ジブリ音楽とV系をかつては好んでいたと聞いたことがある

*7:中東の香りのするバンド。人生を捨てて音楽を掘り続ける後輩からのおすすめで知りました。簡単に因数分解できない音楽を聴くのは良いものです。アルバム通して良かったです。KEXPに出演していて驚きました。

*8:Sacred Bones Recordsには、毎年何かしらやられてます。色々と混ざったような音が気に入りました。アルバムの後半が弱かったことと、この手の音楽は体力を必要とすることが理由でアルバム通しで聴くことは少なかったです。

*9:呂布カルマは、反ヒップホップ的で派手な柄シャツに身を包み、ギャングスタまがいのワル自慢をすることもなく、USヒップホップの流行りに流されることもなく「俺は若い頃のたかじんになりたい黒人よりもi wanna be a たかじん」と宣言してみせます。なんとも痛快です。彼は日本中の流行り物になる以前からヒップホップに人生を捧げて来たラッパーで、現在はフリースタイルダンジョンでの活躍などもあり、ヘッズから絶大な評価を得ましたが、同曲のリリックでこのように綴っています。「下手打った奴から順に居なくなる 仕事や家庭も理由になる 俺は音楽でそろそろ自由になるが 飛んでいかないようにキツく縛る」。彼の音楽への告白は、この上なく“リアル”です。

*10:Lamp主宰レーベル、Botanical Houseから

*11:アイドルかと思えば、シンガーソングライター志望で芸能界入りし、今年でキャリア10周年ということでした。「BBIBBI」という意味不明な文字列は、韓国語でポケベルを意味するらしいです。それを知った時、彼女の全てを許せる気がしました。

*12:Corneliusの得意とするアート(遊び)とポップを融合させるというコンセプトを音楽として完璧な形で実現させている。アウトロ付近で聞ける無限音階の使用など、Cornelius作品からは常に遊び心が感じられる

*13:故Princeからの協力を受けて完成した曲。各所で指摘されている通り、現代版「Kiss」のような肌触りです。死してなおも完全に現役として音を投下するPrinceという怪物の力量は未だ計り知れません。

*14:MVも込みでの評価。スポーツからは程遠いと思われる腹の出たタトゥーまみれの男が「Sports」と絶叫する“異物感”はクセになります。音楽的にもテンポを変える部分が良いアクセントになっていて良いと思いました。ただ、アルバムを通しで聴くと中弛みする印象です。

*15:いつの日かのGuitar Magazineで堂本剛のページがあり、冷やかし半分で目を通したことがあります。細かな内容は覚えていないですが、ジャニーズとは思えないほど音楽的内容について話していて、「Sly Stone やPrinceのことが好き」と言っていたことに強烈な違和感を覚えたことが印象に残っています。その後、彼の制作した音楽を少しだけ聴いたのですが“アイドルのアレ”という感じで興味を失いました。しかし、今年偶然に再開した彼は以前とはまるで違っていました。ジャニーズには“場違い”なマッチョで硬派なMVを初めて観た時、「アイドルファンはこれに着いてこられるのか?」と困惑しました。その音楽は、堂本剛という男がGuitar Magazineで語っていたブラックミュージックへの憧憬が事実であったことを証明していました。

山下達郎がギターで参加したディスコ調の曲「HYBRID ALIEN」も良いです。概ね好意的ですが、アルバムには味付けがしつこ過ぎる“アイドルのアレ”が何曲か含まれていたため、総合点としては控えめです

*16:Radioheadのジョニグリがイスラエル出身でインドで修行した音楽家と共作した作品。ドキュメンタリーが映画化されています

*17:彼女はEd Sheeranなど、超メジャーどころを好むようです。あまり好きではない今風の流行曲のようなものも多いのですが、一部このような曲が混ざっています。個人的に歌唱とラップの中間のような歌い方には弱いです。K-Popに疎いのでこの音楽が斬新か否かはわかりません。したがって、斬新さに惹かれたというよりは音楽が好みだったという理由です。2曲目のライヴ映像の第一声で音を外しているのがかわいい。生演奏している証拠ですね

*18:この手の音楽成分は定期的に摂取したくなります。MVは音源とBPMが違います。うろ覚えですがBOYSAGEと交友があるらしい

*19:例の映画を観ました。どうしようもない女性が自分を発見する物語よりも、曲の良さで泣きました。音楽とは全く関係ない話ですが、元職場にいた控えめ系トラブルメイカーの超美人が「この映画大好きなんです」と言っていて、どの視点からこの映画を楽しんでいたのかが気になりました。

*20:形容しがたい音です。どのようにして出会ったか全く覚えていません。ストリーミングの弊害ですね。ライヴ映像がありますが、演奏がかなり荒れているせいで原曲崩壊していて少し面白かったです。

*21:日常的にはこの辺りを聴くことが最も多いですが、この年代は素晴らしい作品が多すぎて、選びきれませんでした

*22:ゲーム音楽を掘っていた時に一目惚れ。キャラクターの移動中の曲とかとかも面白いので入手してよかったです。知ったのは数年前。プレミア化していたものを気合いで入手。ファンキーでポップなヒップホップという感じ。

*23:日本の歌謡曲とロックの融合。ロックの本場が英語圏にあることを認識しながらも日本語によるロックンロールを模索した野心的な作品。矢沢永吉の代表アルバムには高橋幸宏坂本龍一が参加している。はっぴいえんど解散の年(1972年)に活動を開始したキャロルは、はっぴいえんどとは別に日本語ロックに多大なる影響を与えた極めて重要なバンド。

*24:夭逝の女性SSWの作品。

*25:彼らの代表曲とされている「サヨナラCOLOR」の良さは理解できませんでした。彼らの真髄はファンクとJ-Popの融合にあると思います。日本語詞、中華風フレーズ、長大なギターソロ、タイトなグルーブ、キャッチーなメロディの組み合わせは、文字通り彼らにしかできない音楽です。MVは4分30秒ほどの長さですが、アルバムでは8分32秒とプログレ並みの長さ。間奏は明らかにFunkadelicの「Maggot Brain」を意識しているはずです。

*26:東京事変は、“椎名林檎とバックバンド”ではないです。特に『娯楽』は椎名林檎が作曲に関与していないアルバムなので、椎名林檎のソロ活動の延長ではない東京事変の音が聞けます。3拍子と4拍子を行き来してみたり、1曲のヴォーカルを3人で分けてみたりと曲のヴァリエーションも豊かです。ただ一点、「私生活」と「復習が」平凡に感じましたが、6曲目「某都民」以降の完璧な流れを考えれば些細なことです。余談ですが、 「月極姫」で、Doorsの「Light My Fire」 からの引用らしきフレーズが聞けます

*27:日本のロックンロールの一つの完成系。喜納昌一の父、昌永も琉球音楽と別の音楽の融合を試みていたとのこと。息子の代でそれが結実したと思うと感慨深いです。後で知ったことですが、この曲は久保田真琴の手を通じて細野晴臣の手に渡り、『トロピカル・ダンディ』制作に決定的な影響を与えています。憶測ですが、御大のルーツ(ロック)と民族音楽の調和が可能であることに気付いたのではないかと思います

*28:サントラをツタヤディスカスで入手したけれど、他の曲であまり気にいるものはなかったです

*29:どの側面から見ても斬新な闇鍋サウンド。冗談ではなく、その先駆性から日本音楽史に刻まれるべき作品。サントラをツタヤディスカスで手に入れましたが、劇伴だからか期待したほどではなかったです

*30:選考理由を述べるまでもなく音楽史に残されるべき大名盤。『TROPICAL DANDY』の7割程度の曲と、その他最近の御大の曲を耳コピして分析したところ、御大の曲はコード的にはシンプルで、グルーヴ、音質、使用楽器の選択などで作品の空気を演出していることが判明しました。

*31:ほどほどに音楽に関心のあるGFに聴かせた時、「キリンジみたいでだね。でも、女の人の声が苦手」と言われました。

*32:hideの没プロジェクトZilchで模索した洋楽的インダストリアルロックの手法をJ-Popに落とし込むことに成功しています。現在ネット社会の弊害を風刺しているかのような歌詞もとても印象的です。本人のインタビュー映像を確認したところ、自らの吐いた「糸(=Web)」に引っ掛った情報しか得られないことを自覚しておらず、世界を知ったつもりになって得意になっている「ピンク(=妄想)」に取り憑かれた哀れなスパイダーを歌っているとのことです。

幾つかのカヴァーを聴きましたが、ロックと電子音楽を過激に融合させたインダストリアルロックとJ-Popの組み合わせが斬新だったにも関わらず、そのコンセプトを無視し、洋楽ヘヴィメタルに寄せていたり、流行りのEDMに寄せていたりと残念でした。ただ、唯一CorneliusによるRemixは、インダストリアルロックの精神に則りながらも、Corneliusサウンドを炸裂させていて面白かったです。生前、hideはCorneliusを好んで聴いていたらしいです。

*33:最も大切なことは、この曲が、田中秀和以外の誰にも作ることのできない事実です。

*34:単純なリフで押し通す邦楽ロックとしては別格でリズムが良い。しかしながら、他の曲はホーロック(邦ロック)な感じでイマイチでした。

*35:音楽性強迫性障害の後輩に「大阪のインディーズで若くていい感じの人探そう」と提案して一緒に探していた時、彼が掘り当てました。どうやって探したか聞くと、日本中のインディ系のレコ屋で「大阪」をキーワードで検索して片っ端から聴きまくったらしいです。あほです。ちなみに、この方は、Jesus Weekendのメンバーとのことです。

*36:明らかに過小評価な気がするグループ。打ち込みやサンプリングを駆使し、支離滅裂に思えるほど次々に展開する曲をポップに仕上げる手法に脱帽。Wikiに「2ndアルバムでは4500種類以上のサンプリングソースを盛り込んだ」と書いてありました。狂気。ちなみにネオ渋谷系と呼ばれるジャンルの音楽らしい。

*37:奇抜な名前や外見を理由に彼女の音楽を「サブカル」的に消費したり、「サブカルラッパー」と揶揄することは懸命な判断ではないと思います。全てがUSヒップホップに右へ倣えの「本格派」より、独自の表現を模索する彼女のような存在に惹かれます。DJ KRUSHの「俺は“ヒップホップの伝統”よりも“ヒップホップの自由”を選んだんだ」という言葉を思い出させられます。DJ Krush:ヒップホップの自由

押韻やキャップ着用など、最低限のヒップホップマナーに従いつつも、従来のヒップホップ的文脈とは全く異なる世界観を打ち出し、ヒップホップの可能性を再確認させると同時に、その限界を拡張していると感じます。全体をポップに仕上げることは勿論、ガムラン音階を使った曲などバライティに富んでいて面白いです。

*38:DJみそしるMCごはんに近い理由です。PUNPEEは十分に評価されているので説明は不要とは思いますが、極めてクセの強い加山雄三という素材を大体的に活用し、懐メロとしてではなく現代の若者にも通用する曲として蘇らせています。その上で、加山雄三が素晴らしい音楽家であることも再認識させてくれるこれ以上ないほど理想的なRemix。色々な人が加山雄三を素材に再構築するというテーマのアルバムなのですが、PUNPEE並みのクオリティを全体が保てておらず残念でした。

*39:Go-Goのリズムに乗せて語られる庶民的日常の憂鬱。冒頭の歌詞はこのような感じ。「生きてることに感謝してるけど そんなこと毎日思ってられないし いつの日にか目頭を熱くして たくさんの苦しみをはきだすこともある」 

*40:ハマ・オカモトとカースケ(紅白でも見かける日本を代表するスタジオミュージシャン)のリズム隊が上手すぎる。

*41:「ソウルに欠く」や「テクニカル過ぎる」などの批判コメントが散見されますが、天賦の才を持って生まれた20代そこそこの究極音楽生命体が“シンプルに逃げる”ことなく、彼の持つ難解な音楽理論、音楽的経験、音楽的感覚を全力で活用してポップスにおける複雑性の限界に挑戦していると思えば、感謝の焼き土下座レベルでも足りないくらいです。今後、彼は一体どこへ到達するのでしょう?

「駄目だ!! そんな!!」
   「もうこれ以上そんな力!!」
   「一体!!この先!!どれ程の・・・!!」

*42:ガルシア・マルケスは、ネルーダを「いかなる言語においても20世紀最大の詩人」と激賞

*43:「ウメ子フチに学ぶ」小助川勝義 https://www.frpac.or.jp/about/files/sem1901.pdf

日本の音楽の正体を探して

「芸術の良し悪しは主観」「みんな違ってそれでいい」のような八方美人的感想はつまらないので、好きに書こうと思います。書こうと思った理由はいくつかありますが、日本国内において、海外の音楽を直接的に模倣しているような音楽が評価されている現状に賛同に疑問を感じたことが最も大きいです。

 

日本の音楽は明治時代の西洋式音楽教育の導入以降、西洋音楽が知らぬ間に支配領域を増してきました。それ自体はさして悪いことではないのですが、西洋の音楽を基準とし、それとの距離の近さで音楽の良し悪しがはかられるのは行き過ぎでしょう。それは特に多少洋楽の知識を持っている層によく見られる傾向ですが、個人的には可能な限り距離を置きたいと思っています。邦楽と洋楽の質的な違いを音楽の質の高低として解釈するのは、大きな間違いです。邦楽には邦楽の良さがあります。言語化するとあまりに当然のことですけれども。

 

現在、洗練された良い曲を書く国内のミュージシャンは沢山いると思います。しかし、それがオリジナルであるかは全く別です。中には海外の直接的な模倣に聴こえるものが多数あります。一聴しただけで「あ、海外のアレ系が好きなのね」といった感じで元ネタがわかります。言い方は悪いですが、「それなら海外の元ネタを聴くよ」と思います。海外の音楽に影響を受けている分には全く問題ないですが、もはやコピーバンドと言っても良いような音楽をしているバンドがもてはやされている現状には否定的です。例えば某バンドを聴いた際、「もはやJamiroquaiじゃね?」と感じた人は少なくないと思います。他にもJames Blake、2010年代インディポップ系など挙げていけばキリがないです。そして最も残念なことは、そうしたミュージシャンがメジャーとインディーズのどちらにも多数見受けられていることです。海外音楽事情に疎い日本国内のリスナーにとってはそれらがオリジナルで「良いもの」として受容されている光景を目にする度に何とも言えない気持ちになります。このような洋楽の模倣が上手いミュージシャンが彼らの元ネタを知らないリスナーに支持される構図は、“洋楽志向の強い若手”界隈で非常によく見られます。

 

ひとりの好事家としての意見ですが、海外への憧れを“直接的”に表現した音楽より、その人にしか出しえない音楽を聴きたい訳です。例えばマイブラが好きだからと言って、コテコテのシューゲイザーをしているバンドは面白くないのです。大切なのは、オリジナルであるかどうかではないでしょうか。勿論、オリジナルであっても自分の好みではない音楽もありますが、オリジナルであることが何よりも大切だと思います。そこで、「オリジナルとは何か」、「面白いとは何か」を考える必要が出て来るわけですが、アート・リンゼイの言葉が良いヒントにになると思うので引用します。

音楽に限らず、どんなジャンルのアーティストでも面白いのは、ローカルな部分とユニバーサルな部分を組み合わせることだと思います

余談ですが、より興味のある人は、世界中の大衆音楽の誕生に強く関心を寄せていた中村とうよう氏の著作を読むと良いと思います。輸入品がローカルなコミュニティに“解釈”される過程で様々なジャンルの音楽が誕生することが見事に説明されています。

 

日本においての典型的な例を挙げるとすれば、BABYMETALでしょう。やはりBABYMETALの音楽の面白さも、ユニバーサルな部分(メタル)とローカルな部分(日本のアイドル文化)という視点から読み解けます(個人的に好みではないです。面白くても好みでないことは多々あります)。

 

少し前であれば、Perfume が当てはまると思います。

クラブミュージック+J-Pop

Perfumeと言えばこの曲でしょう。

 

上に具体的なアーティストの例を挙げましたが、もう少し一般的な視点から考えることができるように思います。繰り返しになりますが、引用したアート・リンゼイの言葉に従って考えるならば、面白い音楽には、ユニバーサルな部分とローカル部分の組み合わせが必要です。その条件を満たす日本の音楽は、日本語を使用した音楽、アニソン、ゲームミュージックの3つだと思います。勿論、例外は存在しますし、「ユニバーサルの定義は?」などのツッコミどころ満載ですが気にせず進めます。

 

まずは日本語で歌われている面白い音楽をいくつか挙げていきましょう。言うまでもなく、日本で発表されている大半の音楽が含まれます。英語で歌って日本らしさを消すよりも、日本語で歌った方が言語的特徴からオリジナルなものになりやすいように思います。英語で歌っていないので「世界的」に流行する可能性は低いですが、それは質の低さを意味しません。オリジナルで良い音楽でも世界的に評価されないことはあります。売れてるものが世界一美味しいなら(以下略)

 いわゆる音楽オタクは、洋楽オタクであることが多く、あまり共感してもらえない部分もあるとは思いますが気にせず進めます。伝統的なポップス歌手は勿論入ります。美空ひばり吉幾三、などは言わずもがなでしょう。個人的には松任谷由実は別格だと思っています。まともなヘッドホンを使って「ルージュの伝言」を聴けば、日本語ポップスとビーチボーイズの融合を発見できるはずです。ちなみに吉幾三は、作詞作曲を自身で手がける立派なシンガーソングライターです。

 

音楽オタク受けする人たちを挙げるとすれば、トクマルシューゴコーネリアス坂本慎太郎などが良いかもしれません。彼らはサウンドデザインの面でも特筆すべきものがあり、世界中で似た作品を探すことは困難でしょう。

 


 

 

勿論、有名どころのJ-Popも含まれます。椎名林檎BUMP OF CHICKENスピッツなど、単なる海外の模倣ではない良質な音楽をしているミュージシャンが沢山います。 

  

あまり詳しくないので言及しませんが、ロキノン系やヴィジュアル系の中でも面白いもはあります。*1ヴィジュアル系であるかは微妙ですが、L'Arc〜en〜Cielは、豊かな音楽的背景を感じる良いバンドだと思います。

 

上げていくときりがないのでアニソンに移ります。

アニソンは楽曲中でのキャラクター同士の掛け合い、極端に早いBPM、複雑なコード進行など非常に面白いものが多いです。人が歌うことを想定しているのかとさえ思うほど複雑な曲もあります。電波ソング的な早口は、ラップとは違う文脈でのポエトリーリーディングと捉えられなくもないです。特に「もってけ!セーラーふく」は、早口、強烈なファンクベース、ナンセンスな言葉遊び、キャッチーなサビなど、アニソンの闇鍋感が非常に良く現れています。作曲者の神前暁は、『アイドルマスター』の諸々の作曲でも有名です。


 歪んだギターやギターソロといったロックの特徴を持っていますが、明らかに複雑なコード進行、極端な早口、スラップベース、アウトロのウォーキングベース、キャッチーなサビ、もはやフュージョンのようなキメなど、アニソン特有の闇鍋感満載です。ライヴ映像を確認したところ、完璧に歌っていて驚きました。プロの声優はすごいです。


 

 次にゲームミュージックを紹介しましょう。同時発音数、ゲーム画面との相互関係などの制約が良い音楽を生み出す要因となっています。言わずもがな、近藤浩治は別格です。マリオとゼルダの音楽は、間違いなく日本音楽界における偉業です。

 


田中宏和も忘れてはならない1人です。『Mother』 や『メトロイド』の作曲の仕事が有名です。しのごの言わず『メトロイド』の音楽を聴けばわかります。


ゲームミュージックではないですが「ポケモン言えるかな?」は、極端な曲調の変化や歌詞の大部分がポケモンの名前で構成されているなど独創的です。ビートルズの「I Am The Warlus」から大胆にサンプリングしています。長くなり過ぎるのでこのあたりで楽曲の紹介は終わりです。

 

この記事は、「音楽好き(洋楽好き?)」とされている人たちを仮想敵として当てつけのような気持ちで書きました。「日本の音楽は所詮ガラパゴス」といったことを言う人はいますが、そのガラパゴスな要素が日本の音楽のオリジナリティを支えているのです。「粗悪な海外のコピー製品より、身近なガラパゴス音楽の方がオリジナルで面白いんじゃないか」というのがこの記事で言いたかったことです。ただ、オリジナルであることは良い音楽であるための必要条件であって、十分条件ではないことは強調しておきたいです。日本的なオリジナル音楽であってもつまらないものは山ほどあります。安易に洋楽の模倣に逃げず、洋楽からの影響を自分の表現に昇華しているミュージシャンが国内で音楽でしっかり評価される日が来ることを祈ります。

 

最後に矢沢永吉の発言を引用して終わりです。彼は、1980年代のインタビューで洋楽ロックをお手本に「パクリ」を繰り返している同業者を「軽蔑してるね」と批判していました。

 

ロックに詳しい層から見ればダサいモノであっても、本当に自分の内面から生み出した音楽をやる。そうでなければ、恥ずかしくて人前に出られない

 

*1:ただし、個人的に好きではない

コード進行・分析メモ  B.J Thomas「Raindrops keep fallin' on my head 」

 B.J Thomas「Raindrops keep fallin' on my head 」

 

バカラック御大の大名曲。歌詞も涙が出るほど素晴らしい。

アメリカンニューシネマ系の映画が好きな人は必ず知っているはず。


 

セカンダリドミナント以外は、特筆すべきダイアトニック外のコードはなし。

ただ、そのセカンダリドミナントの使い方が面白く、楽曲の肝となる。

 

Key In F

 

Intro
F - C - Bb - C

Ⅰ Ⅴ Ⅳ Ⅴ

 

言葉遊びのような朗らかなIntro。理論的な解釈は不要と判断。

 

 

Verse 1

F- FM7-F7- Bb

Am- D7- Am -D7 -Gm7×2- C7

 

最近分析したくなる曲に頻出のⅠ- ⅠM7- Ⅰ7 のクリシェから Ⅳの進行。

Mild High Club 、Velvet Underground でも見かけた。Ⅰのコードを伸ばしたいんだけど、そのままでは少し退屈かなと感じるので使用されていると解釈。また、次のⅣのドミナントになっているので、最終的には繋ぎとして機能している。

 

次は、Am- D7- Am -D7 -Gm7×2- C7つまり、Ⅲm Ⅵ-Ⅲm-Ⅵm- Ⅱm - Ⅴ の進行。

Ⅵがセカンダリドミナントとしてメジャー化されているにも関わらず、一度で解決せずに繰り返すのがとても面白い。そして、Gm7 が1小節長いのがポイント。

 

Verse 2
F- FM7
Bb- C- Am- D7- Gm7×2

Bb -C -Bb- C

 

 

Ⅰ -ⅠM7- Ⅳ- Ⅴ- Ⅲ- Ⅵ- Ⅱm-

Ⅳ- Ⅴ- Ⅳ- Ⅴ

 

 

Verse 1 に似た進行かと思えば、実はVerse 2 の導入である不思議な進行。

ⅠM7 のメロディに9thの音が入っていてオシャレ。

Ⅳ-Ⅴ はキメのようなもの。

 

 

まとめ・感想

ポップスとしてあまりに完成されていて、文句のつけようがない。最初にVerse1を提示した後、さりげなくストリングスが挿入されたと思えば、次のVerse2にはストリングスが消えているアレンジに不思議を感じる。曲自体はシンプルでもアレンジで少しずつ盛り上がりを演出する手法には何度聴いても感動がある。

 

この手の曲はベースがぼんやりとしか聞こえないので音全体の雰囲気を探って音をとる必要があるのでとても難しかった。職業作曲家のつくる音楽は、非常に難しいと思っていたけれども、想像したよりシンプルな曲で助かった。

 

 

コード進行・分析メモ Velvet Underground 「After Hours」

Velvet UndergroundAfter Hours



Velvet Underground は、音楽好き界隈の王様と言ってよい。

形式化された近年のロックにありがちな強烈なカタルシスを約束しない静謐な音楽は、飽きがくることがなく、噛むほどに味が染み出る。音楽好きの中で、果たして彼らを嫌いな人など存在するのだろうかとさえ思う。

 

骨となる部分はとてもシンプルな曲。Maureen Tuckerのヴォーカルが印象的な曲。

 非常に良い意味で、Verse 2のリズムが崩れる箇所に時代を感じる。DTMが曲のパルスを支配するようになった現代では、こうした崩し方は中々お目にかかれない。

 

Key In B♭

Verse 1

B♭ Gm Cm F

 

Ⅰ - Ⅵm - Ⅱ -  Ⅴ

言わずもがなのイチロクニーゴー。

ジャズとは違いトライアド中心なのでオシャレというよりは明るく、躍動感がある。

 

Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ のみで完結できるメロディなので、繰り返すことができる。

エンディングの以下の盛り上がりはその手法

I'd never have to see the day again
I'd never have to see the day again,
Once more
I'd never have to see the day again

 

 

Verse 2  

Ⅰ- Ⅰ7- Ⅳ- Ⅳm

B♭ - B♭7  E♭ -E♭m

 

Ⅰ7が鳴る箇所はどこか何とも言えない不思議な感じがする。Ⅰ7だからと言って、全てがブルース進行的には響かない。

この進行は偶然、Mild High Club の「Skiptracing」でも見られた。彼らの場合は、Ⅳm をトニック ⅠM に解決せずに、Ⅲm に解決し、そのまま4度進行で下降していた。ちなみに、そのⅠ-Ⅳm - Ⅲm -Ⅵm- Ⅱm Ⅴ はフリッパーズギターの「Groove Tube」のサビの進行でもある。

 

Bridge

B♭から半音で下降したかと思えば、Dm と AM を繰り返す謎の進行。

あえて補足する必要もないとは思うけれど、ダイアトニックコード的に考えるのであればAMではなく、Am♭5が正解。

Dmの時は、♭6度 - ♭7度 - ♭3度

AM の時は、1度-2度-5度 のメロディ

AMはドミナントのように機能しているのかもしれない。

DmはⅥmのダイアトニックコードで、ダイアトニックスケール(この場合エオリアン)から外れた音は出てこないので、素直に調性内のコードと解釈してもよいかも。

 

 

後は、Ⅵm - Ⅱ - V を使ってB♭に戻ってくる力技。

このBridge こそがVelvet Undergroundが凡百のバンドとは異なるところかもしれない。マイナーコードをメジャー化することで調性を不安定にする手法はビートルズなど、「サイケデリックロック」と呼ばれるバンドの曲によく見られる。

 

まとめ・感想

原曲のみでは不安な箇所があったのでLive版などを参照しつつ分析した。楽しい雰囲気の曲なので家族で歌うと良いかもしれない。ただ、歌詞を読んでいないので恋人や子供と歌う内容かどうかはわからない。個人的には「Candy Says」、Who Loves The Sun」、「Pale Blue Eyes」など、彼らの歌モノが好み。

 

The Velvet Underground

The Velvet Underground

 

 

 

 

コード進行・分析メモ Mild High Club 「kokopelli」

 Mild High Club 「kokopelli」

 

何故かヒップホップの“当たりレーベル” Stone Throw に所属するサイケデリックなバンド Mild High Clubのお気に入りの曲。アルバム全体を覆うダルさを分析したくなった。

1曲目の「Skiptracing」も非常に良い曲で分析したけれど、何となくこの曲にした。

 


Key in D♭

Verse 1

D♭M7 - Cm7♭5- F7♭9 - B♭m7-Fm7

 

DbM7が鳴っている時のメロディが特徴的。

M7から始まるアルペジオはオクターブ上のM7まで上昇し、6度の音に半音で下降する。M7から始まるメロディは幻想的で優しく聞こえる。また、微妙な半音階が調性を曖昧にすることで独特の浮遊感がある。

 

続くコードは、 Ⅵm に向かうツーファイヴ。F7はダイアトニック的に言えばマイナーになるところだが、続くコードのドミナントと考えて7th化されている。小難しい言葉で言えばセカンダリドミナント

 

 ツーファイブ、Fm7 - B♭7 を挟んで一気にE♭m7 に到達。

畳み掛けるように怒涛の4度進行。

 

ニーゴーサンロク(Ⅱm - Ⅴ7 -Ⅲm7- Ⅵm7)

E♭m7 A♭7  Fm7  B♭7

E♭m7 A♭7 -> Verse 1 に戻る

 

Ebm7 の4度から始まり短3度に着地し、次のコードのアルペジオ

同じくFm7の4度から始まり短3度に着地し、次のコードのアルペジオ

この繰り返しが非常に心地良い。また、セカンダリドミナント化したB♭7の長3度の音をなぞることでメロディのエモさが増していることにも着目。

 

 

まとめ

狙った訳ではないけれど、ミツメの「煙突」に引き続き4度進行の連発が出てきた。もしかすると、好みの進行なのかもしれない。

コード的にはとてもシンプルな曲だった。ただ、曲の顔となるメロディには少し捻りが加えてあり、そこが曲の印象を大きく変えているのだと思った。また、音色やリズムが与える印象の強さを再確認した。

 

「Skiptracing」のkey は B、今回分析したこの曲は D♭と、珍しいKey をよく使うバンドなのかもしれない。ギターやベースギターなどのロック的な楽器は勿論、管楽器的や鍵盤楽器などの楽器でも演奏しづらそうなkey なので、とても不思議な感じがする。

 

余談だが、ロックの曲は♯系のkeyが多く、ジャズの曲は♭系のキーが多い。

非常に単純な3コードの曲や半音下げチューニングを使用されている曲は例外として、ロックの花形楽器であるギターの開放弦を使ったコードを押さえやすく、それらのコードを鳴らしながら曲を作るので♯系のkeyが多くなるのだと思う。E G A C D などを適当に並べるだけでロックっぽくなる。Gとか、Cadd9 とかはロックギタリストが多用するコード。

 

一方ジャズは、顔となる管楽器に合わせた結果だと思う。(雑な理由づけで申し訳...)

 

 

 

コード進行・分析メモ  ミツメ「煙突」

 収録アルバムは以下。『eye』は、amazonで「入荷未定」となって価格が高騰しているのを見かけたので、欲しい人は早めに手に入れるのが良い。

eye

eye

 

 

Verse 1

A - C♯m - D - D on E

Ⅰ -Ⅲ- Ⅳ  Ⅳ/Vのよくある形

 

終始感を弱めるためにドミナントの音をベースにサブドミナントのコードを乗せるのは常套手段。ⅣのコードのところでM7th の音を上手く使っているのがポイント。

 

 

Verse 2

導入前に 主音A からの下降フレーズが入る。

A G♯ F♯ E 

 

D- E - C♯m - F♯m- Bm - E - A 

Ⅳ- Ⅴ - Ⅲm - Ⅵm - Ⅱ m - Ⅴ - Ⅰ

 

 

ジャズや渋谷系の曲で頻繁に見られるオシャレ進行。ドミナントからⅠに解決せずに、4度進行を連発するのはよくある手法。メロディは上手く3度の音を使いつつ綺麗に繋いでいる。Ⅲmのところのメロディは、フリジアンスケールをm3から7♭まで下降して次のm3に繋いでいるのはジャズのようなフレージング。

 

 

まとめ

音楽理論を知らない人でも聴いていて「アレ、変だな」と思う箇所には、ノンダイアトニックコード(キーから外れた音)が登場している。この曲は聴いていて引っかかる箇所はないので、綺麗にダイアトニックコードを使っている。

 

余談だが、「 fly me to the mars !!!」のシングルB面ヴァージョンは、アルバムヴァージョンとアレンジが大きく違う。シングルB面ヴァージョンでは、ドラムマシーンを使用していて、大々的にギターが導入されている。しかし、個人的にはアルバムヴァージョンの方が圧倒的に良いと思う。シングルB面ヴァージョンは、ギターが鳴りすぎていて少しうるさく感じた。あと、ミツメはベース上手い。ギターポップバンドに足りていない黒い成分がとても良いスパイスになっている。

 

個人的な話だが、私にとってのミツメは『ささやき』で止まっている。理由は推して知るべし。

マイルス・デイヴィスの歌

インストゥルメンタルヒップホップの伝説、DJ Krush があるインタビューで、「マイルスは自分のしていたことをずっと昔にしていた」と語っていた。

 

マイルスとの出会いは高校生の時。初めて聴いた時の印象は、中高音が耳に刺さるようで痛いという感じだった。恐らく当時使用した安価なイヤホンが原因だと思う。しかし、音楽を聴く人間としてマイルスから逃れられるはずもなく、So What に行き着いた。あの独特のモーダルな空気に馴染むまで時間を要したが、毎年必ず何度か聴くアルバムになった。ただ、今となっては、楽器を演奏する能力の乏しかったあの頃の自分は、雰囲気を楽しんでいるに過ぎなかったと思う。*1

 

ここ最近、楽器を比較的真面目に練習するようになり、ジャズの名手と言われるプレイヤーの演奏を分析的に聴くことが多くなってマイルスを部分的に理解できるようになってきた。

多くのジャズ系のミュージシャンは、音数が多すぎると感じる。加えて、複雑なコード進行の上で歌うことすら困難な複雑なスケールを使用するので、演奏からメロディの輪郭が見えてこない。大衆を踊らせていたスウィング・ジャズが、ミュージシャン同士の競い合いへと変容したジャズの歴史を鑑みれば当然の帰結かもしれないが、歌を好む自分の肌には合わない。

 

他方、マイルスは、作曲的な方法論でアドリブを取るのがとにかく上手い。マイルスは、トランペットを持った“歌の人”だった。極めて優れたヴォーカリストが口を開いた瞬間に聴き手を圧倒的するようなそれをトランペットで再現する。

聴いてしまえば簡単に思えるそれは、コード進行全体がクリアに見えていることは勿論、コード間の音の関係性を深く理解していないとできない離れ業だと言える。トライアドの音を中心に据えてコード感の提示を求めるジャズで、少ない音数で、コード間を縫うように美しいメロディを奏でることは本当に難しい。まして、それをアドリブでするとなると、想像を絶する難しさだと思う。

言うまでもなく、マイルスはそれを得意としていた。だからこそ、マイルスの音楽は、曲を「アドリブの素材」としてではなく、アドリブ部分も含めて全体を退屈することなく歌のように聴くことができる。

 

その考えに基づくと、マイルスがモードジャズに行き着く理由がよくわかる。

モードであれば、コーダルなアプローチであればテンションと言われる音でさえも自由にロングトーンとしても自由に伸ばすことができる。必然的にコードの制約を受けてしまうコーダルなジャズでは、歌いづらかったのだと思う。

 

マイルスの歌い方は、コードに対して何度でアプローチをしているといった分析をするだけでは見えてこない。それでは所謂ジャズ的なアドリブになってしまう。もっと根本的な歌の捉え方が必要なのかもしれない。

 

マイルスはジャズの人という共通認識があるが、自分自身のことをジャズミュージシャンではないと考えていたらしい。実際、常に“ジャズではない何か”を追い求めていたように見える。現在、本人の思惑とは異なる結果となってしまったが、彼の音楽的功績そのものが「ジャズ」と呼ばれるようになったのだから仕方がない。

 

あまりにも偉大なマイルス。未だ足跡や影さえも見えそうもない。

 

 

*1:そのようなニワカにも圧倒的な説得力で聴かせてみせるのがマイルスの素晴らしさ