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現代最高のベーシスト MonoNeon とは?

MonoNeon の衝撃

 

MonoNeonは、ベースの歴史を変える可能性のある存在です。*1Jimi Hendrix や Jaco Pastorious と同様、好きなジャンルに関係なく一聴の価値はあると思います。

 

しかし、日本語で書かれた情報があまりにも少ないので、この記事を書こうと思いました。幸いにもアメリカでは既に注目され始めているようで、Wikipediaやインタビューが充実しています。この記事は、それらを参考にして書きました。一番下に参考資料としてまとめたので興味を持った熱心な音楽オタクは是非読んでみてください。

 

まず始めにMonoNeon の面白さを箇条書きにします。

 

・名前の通り全身蛍光色

・コード進行が激ムズで有名なSteely Danの曲を平気で弾きこなす

・D'Anjelo や J Dilla が開発した“ヨレたビート”を出せる現代的ベーシスト

・変態系ジャズ・フュージョン系ギタリストの大家David Fiuczynski*2と活動

微分音(以下で解説)を鳴らせるベースを使った演奏もする

・Princeの生前最後のベーシストとして選ばれていた

シュールレアリスムダダイズムミニマリズムアメリカ抽象表現主義など、芸術から大きな影響を受けている。(Ellsworth Kelly・Frank Stella ・René François Ghislain Magritte・Marcel Duchamp・Mark Rothko・ Jackson Pollock・ Salvador Dali・Max Ernst などを好むようです)

 

最後に彼のインタビューからの抜粋です。

 

One of my primary goals is to possibly combine the sounds of John Cage and Mavis Staples, Iannis Xenakis and Bobby Womack, and Stockhausen and Albert King, etc. in my bass playing and compositions.

MonoNeon 

僕の最重要の目標の一つは、作曲やベースの演奏の中で、ジョン・ケージ(現代音楽の伝説)、メイヴィス・ステイプルズ(R&B・ゴスペル歌手)、クセナキス(著名な現代音楽家)、ボビーウーマック(ソウル・R&Bの凄い人)、シュトックハウゼン(世界初の電子音楽作曲家)、アルバート・キング(伝説のブルースギタリスト)の音を可能な限り組み合わせることだ。

Interview with Dywane ‘Mononeon’ Thomas Jr by Kilian Duarte

 

 

多分、上に名前が出てきたミュージシャンや芸術家を知っていれば知っているほど、ワクワクすると思います。これで面白くないミュージシャンであるはずがないです。

MonoNeonの音楽

これを聴けば彼の凄まじさがわかるはずです。

 

何が凄いかを解説するまでもなく“なんか凄い”感が伝わったのではないでしょうか。違和感の正体は、彼が半音をさらに細かくした音(Microtonal tone(微分音))を鳴らすことができるベースを弾いていることです。彼の音楽的な表現には、1オクターブを12分するだけでは足りないということですね。これはJacob Collier にも共通する点です。簡単に説明すると、一般的な五線譜の表記法では書けないほどに細かい音を弾いています。

ここで強調したいのは、MonoNeonの演奏からは、下手な現代音楽家にありがちな技術がないことを誤魔化す“反則レスラー”感が全く感じられないことです。MonoNeonの演奏能力は確かな基礎力に裏打ちされています。*3

 

彼のユーモアの側面からもひとつだけ紹介しておきます。


この動画のように人の声にベース・ギターを当てる動画をMonoNeonはよくあげています。(大量にあるので飽きます)

音楽的ではない話し声からメロディやグルーヴを見つけ出すのは難しく、何テイクも録り直すらしいです。

 

作曲もします。何から何までMonoNeon です。

奇妙なイントロは、微分音のせいでしょう。

再生数が4万回程度と少なすぎます。人類の損失です。(2018年4月27日現在)

 

 音源は挙げて行くとキリがないのでこのあたりにしておきます。

 

経歴+補足的情報 

 

以下にWikiやインタビューから得た彼の情報を箇条書きにします。

 

・MonoNeonの本名は、Dywane Thomas Jr.

・1990年の8月にメンフィスで生まれた。

・Ne-Yo の4枚目のアルバム『Libra Scale』に参加している。(どの曲かは不明)

 ・音楽家の家庭に育ち、4歳からベースを弾いている。父親はベーシスト、祖父はジャズピアニスト

 ・小さい頃は、レッスンとは無縁だった。

・教会のピアニスト(オルガニスト)から音楽的に多くのことを学んだ

 ・11歳〜12歳頃 The Bar-Kays と共に、14歳の頃には、South Soul Rhythm Section で演奏活動をしていた。South Soul というのは、メンフィスにある Stax Music Academy という夏期講習などを通じて音楽教育を行っている学校に通う若者たちで結成されたグループ。

 ・Berklee音楽学校 に入学し、そこに勤めるDavid Fiuczynskiと共演。Berkleeを出た(恐らく自主退学)2010年には、David FiuczynskiとロサンゼルスのBaked Potato*4で活動。

・若過ぎてあまり輪に入れず、Berkleeでの生活は楽しくなかったらしい。本人曰く、人間を磨く時期だったらしい(音楽的に学ぶことはなかったということか…?)。この時期に蛍光色の服を着るようになった。

・右利きだが、右利き用のベースを逆さに持って左手でベースを弾く。特に意識することなく4歳の頃からこのスタイルで弾き始めたらしく、普通には弾けない。強いベンド(チョーキング)ができるので本人も気に入っている様子。

 ・Marcus Miller はベースマガジンでのインタビューで、MonoNeonのベースは、サザンソウル・ブルース・ファンクの影響があると指摘。

 ・Microtonality に興味を持ったきっかけはDavid Fiuczynski。

 ・ギターも弾ける。当然、Microtonal tone が鳴らせるギターも弾く。

 ・2015年にPrinceがMonoNeonをネットで発見し、Paisley Parkに誘った。そして、Judith Hill*5のために作ったバンドのベーシストとしてMonoNeonは働き始め、後にPrinceのバンドでもベースを弾くようになった。

・Prince との面白いエピソードは、ある日スタジオで、MonoNeonが携帯触っているとPrinceに「僕は携帯アレルギーだからそれを外に置いてきてくれないか」と言われたこと。

・Princeとのセッションでリリースされているものはこれのみ。

Ruff Enuff / MonoNeon


Pete Rock は、MonoNeonのファン。ニューヨークのBlueNoteで共演したらしい。

 

個人的感想

MonoNeonを初めて聴いた時、Chris Dave、Mark Juliana、Jacob Collier を聴いた時と似た衝撃を受けました。「ああ、人類はここまで到達したのか…」という感じです。

 上に挙げたミュージシャンと同様に、MonoNeon も既存の音楽的手法に頼るだけではなく、自分で音楽の可能性を拡張しようとしているのだと思います。その方法のひとつが微分音なのかもしれません。

MonoNeonと同じく新世代で、彼に負けず劣らずの才能を持つJacob Collierも微分音の使い手です。ポップに聞こえる音の中に微分音を混ぜる手法が巧みです。5分30秒あたりからゾクゾクしませんか?

楽譜に落とし込んだ人はいかれてる。

 

シェーンベルクの12音技法のような難解な手法は大衆化しませんでしたが、微分音が大衆化する時代が到来すれば面白そうです。もしそうなれば、新時代の幕開けかもしれません。

 

MonoNeon は派手な外見やYoutubeの動画から何となく「イロモノ」的な印象を与えてしまいそうですが、実際は極めて練習熱心で真面目な音楽家のようです。

彼が掲げる “MonoNeon art manifesto”からは、Ivan Wyschnegradsky や Julián Carrillo といったMicrotonal の先人への敬意と、彼自身で新たな分野を切り開こうとする野心が読み取れます。

 

 彼の新しいアルバムも素晴らしいです。ビートミュージック、ヒップホップ、現代音楽、ネオソウル、ローファイ、色んなものが混ざっています。Ras G が好きな人はハマりそうな気がします。

個人的に、今年のベストアルバム入り間違いなしです。

聴き慣れることが勿体なく感じてしまい、数回しか聴いてないですが…

 

 

参考資料

Dywane Thomas Jr. - Wikipedia

 

Interview with Dywane ‘Mononeon’ Thomas Jr by Kilian Duarte

 

http://blog.kexp.org/2016/05/06/interview-with-bassist-mononeon-one-of-the-last-people-to-play-with-prince/

 

Guitarist MonoNeon On Missing Prince, Being Inspired By Cardi B & More [Interview]

*1:個人的にはもう既に変えたと思ってます

*2:上原ひろみの『Time Control』のギターの人と言えば馴染みがあるかも

*3:実はBandcampにある最初期のアルバムはいわゆる現代音楽という感じですが

*4:LAで非常に有名なジャズやフュージョン系の人がライヴをするクラブ

*5:This is it』 でMichael とデュエットしてる女性、『バックコーラスの歌姫たち』にも出演してる。