2019-1007 ギター練習メモ
普段どのようにギターを練習をしているかを少し書く。私のギター練習は、基本的に指板理解を中心としたもの。面倒な筋力トレーニング的反復を要する練習はしない。まともな練習メニューを考えるとどうしてもジャズに近くなる。しかし、曲を引き立てるのではなく、テクニック披露大会となっている類のジャズはとても退屈で、あの手の演奏は志向していない。ジャズに接近することなく、ジャズ的な練習を取り入れるという矛盾した状態が続いている。
ウォーミングアップ
0~12フレットに存在する全てのCを弾く。続けて、Circle of Fifthを右回りにCからBまでで同様のことを繰り返す。続けて、Circle of FifthをCから左回りでF#まで同様のことを繰り返す。
トライアド
0~12フレットの範囲で、基本形・第一展開形・第二展開形の3種を1~3、2~4、3~5、4~6の弦の4パターンの組み合わせで作る。全12種類のフォームが登場する。無意識に全ての音名が見えるようになるまで。順番は、Circle of Fifth をCから右回りにBまで。続いてCから左回りにA♭まで。気が向けばD♭まで。
慣れたルート音については、1オクターヴの範囲を超えたトライアド、つまりオープントライアドを加えて負荷あげる。あるポジションでクローズトライアドを弾いた後、そのポジションでオープントライアドを弾く練習。クローズトライアドでの意識付けが曖昧な状態で、オープントライアドを導入すると負荷がかかりすぎるので注意。
以上がスムーズにできるようになった段階で、add9、マイナー、sus4、aug、dimのパターンも練習メニューに加える。
指定のルートに対し、度数関係と音名が同時に見えるようになった段階で「習得」と判断する。必ずしも段階的にではなく、ある習得できたと判断した段階で、徐々に負荷を上げて良い。関連するAとBを組み合わせる複合的な練習もAとBの両方に良い影響があるので積極的に導入すること。
現在ピックアップしている各々のルート音の習得度をメモして確認する。
ex.ルートC:クローズトライアド、オープントライアドは習得。現在add9を進行中
Hazel Nuts Chocolate
全く名前も知らない日本のアーティストだが、良いものに出会った。Aメロの音程の跳躍が非常に心地よい。Hazel Nuts Chocolateという人(グループ?)。しかし、残念なことに、発表されているアルバムのほとんどが廃盤で価格が高騰している。
ムッシュかまやつ 「Gauloise」
「あなたがいるなら」でチョーキングを解禁して話題となった(?)コーネリアスがチョーキングしながらブルースペンタを弾き散らかす非常に貴重な映像を発見した。キーはBm。
そういえば、巷で「Charが日本にマイナー9thを持ち込んだ初めてのギタリスト」のような扱いをされているようだが、ムッシュかまやつの方が早い。ムッシュかまやつは、日本語ロックの先駆者というだけではなく、Charより早くテンションコードを導入した人物でもある。Charの『Char』の発表は、1976年9月のこと。一方、ムッシュかまやつの「ゴロワーズ を吸ったことがあるかい」は、1975年2月に発表されている。
ムッシュかまやつは、スリーコード中心の快活なロックンロール曲だけではなく、ビートルズの「In My Life」ように陰影のある曲も書いた。それがすこぶる良い。
hide 「ピンクスパイダー」分析メモと感想など
最近は昔聴いたものを整理したい気分なのかもしれない。過去の自分の聴き返し作業は、何かと気恥ずかしく、思い入れで正当な評価が見えづらいという欠点もある。しかし、再評価で得られる恩恵はそれ以上に大きい。もちろん、聴き返して「これは駄目だ」と落胆することも多いが、「何の音楽知識も持たない当時中学生の自分を驚かせるだけの理由がある」と納得させられる作品もある。今回扱うhideの「ピンクスパイダー」は、後者に分類される作品である。
コード進行まとめ
Verse1
Bm
Verse2
F# - A
Verse3(サビA)
Bm
Verse4(サビB)
B - D#m on A# - A - E
B - D#m on A# - A - E
G - A - B
分析メモ
「ピンクスパイダー」は、hideの結成していたバンド、Zilchの経験がよく活きている。「Electric Cucumber」は一貫して、コード進行に頼らず、ワンコードのリフと音の抜き差しのみで、モーダルに曲を展開させている。「ピンクスパイダー」においてもそのモーダルな方法論が一部取り入れられている。より具体的に言うと、Verse1とVerse3(サビ)がモーダル。Nine Inch Nailsからの影響か?(いずれ、Nine Inch Nailsも分析してみようとは思う)。
しかし、「ピンクスパイダー」は、「Electric Cucumber」からの進化を感じさせる点が2つがある。1つは、日本語の導入。もう1つは、Nine Inch Nailsからの影響を強く感じさせる当時のアメリカロック最前線のサウンドをJ-Popと融合させたこと。面白いことに、「ピンクスパイダー」には、実質的にサビが2つある。1つは、「ピンクスパイダー」と繰り返すサビA。これは「Electric Cucumber」的な方法論に基づいている。一方、サビBは、B長調にモーダルインターチェンジし、豊富なコードチェンジで曲の展開感を作るJ-Pop的な方法論に基づいている。「ピンクスパイダー」の革新性は、異なる方法論に基づくサビを1つの曲中に共存させたことにあると思う。
J-Pop的な方法論に基づいていると指摘したVerse4は整っている。オンコードを使用し、ベースが半音で下れるように工夫されている。さらに、G - A - Bという進行はロックの定番の借用和音を用いたコード進行で、hideがロックをよく研究していたことが伺える。自分の知る限り、Oasisで頻繁に使用されている印象がある。例えば、「Champagne Supernova」、「Married With Children」、「She's Electric」が思い浮かんだ。Chapterhouseの曲でも使用されていたような気がする。
それにしても、hideの曲はまだ3曲しか耳コピしていないが、おかしなキーが多い。「Hurry Go Round」と「ピンクスパイダー」は両方キーがB。「Electric Cucumber」は、C#フリジアンモード。ロックギタリストとは思えない。いや、少なくとも、リフ主体のメタル界隈で、フリジアンモードは定番とされている可能性は考えられる。いずれにしても、キーBは稀。
カヴァーについて
「ピンクスパイダー」は幾つかのカヴァーがあるようなので軽く触れておく。まず、Rizeのカヴァーについてだが、下手なメロディラインの崩し方、特にヴォーカルがメロディのリズムを不自然に短く変更したことと、原曲にない「イェー」にかなりの不快感を覚えた。また、音色、アレンジなどの全てが原曲に近く、ほとんどコピーと言えるものが、MVまで作成して公式に発表されていることに驚いた。トリビュートとしてライヴで演奏するのであれば理解できるが、公式発表は理解に苦しむ。
倖田來未も「ピンクスパイダー」をカヴァーしている。Rize版と異なる点で極めて不快だが、原曲とは異なるアプローチを取っているため、カヴァーとして公式に発表するために必要な最低限の条件は満たしていると思う。
最近では、MIYAVIのカヴァーもある。しかし、ハイハットの入れ方、悪い意味で最近の打ち込みっぽいキックの音色、曲の盛り上げ方など、アレンジの全てが「海外」の流行りそのもので、全く好みではない。
やはり、コピーではなくカヴァーとして公式に発表するのであれば、Robert Glasper Experimentの「Smells Like Teen Spirit」のように、自らのフィルターを透過させたものが好ましい。ただ、自らのフィルターを透過させるとは言っても、“ジブリ名曲ジャズ”のようなアレンジでは曲は引き立たない。自らのオリジナリティを注入すると言う方が正しいかもしれない。
その意味では、カヴァーではなくRemixではあるが、「ピンクスパイダー」の解釈という点では、Corneliusの一人勝ちという印象。
余談だが、意図的かどうかは不明だが、1:27のあたりで、Corneliusの「Count five or six」と非常に似たフレーズがある。
実はhideは、思い出波止場、暴力温泉芸者、岡村靖幸、小西康陽、砂原良徳などと共に『96/69』というCorneliusのRemixアルバムに参加している。この面子を見ると「hideが生存していたならば、X Japanのリスナー層とは全く異なるコア層に好まれる音楽性により接近していたのではないか」と思わずにはいられない。
hideが好んでいた音楽リストを見ると、いかにもギターキッズ好みのKissやLed ZeppelinなどのHR/HM系音楽の中に、Bauhaus、Stranglers、Ultravox、Beck、Nine Inch Nailsなど、必ずしもギターがサウンドの要ではないパンク以降の音楽が混ざっていることがわかる*1。
雑な総評
私には、hideが神格化されるほどの存在なのかどうかはわからないが、幾つかの点では、確かに面白い試みをしていたと思う。1つは、平沢進に並ぶほど早期のインターネット進出。メジャーアーティストのMP3配信は平沢進が日本で最も早かったと言われているが、hideも生存していたならば、それに並ぶほど早期に音源のネット配信をしていたのではないかと思う。ウェブサイト作成は勿論のこと、彼の企画したフェスのライヴ映像をネットで配信するなど、ネット参入に極めて意欲的だった。余談だが、自分で調べた限りでは、日本における最初のライヴ映像のネット配信は、1995年の坂本龍一であった(YMOメンバーは何かにつけて早すぎる)。
2つは、hideはX Japanのギタリストとしては、様式化された「ピロピロ(=HR/HM的ギターソロ)」を受け入れていたが、ソロ活動においてはそれに拘泥しなかったこと。説明には、少々ギターソロの歴史を振り返る必要がある。
70年代後半のパンク以降のバンドは、「ピロピロ」を徹底して嫌ったが、時を同じくしてVan Halenが登場し、ピロピロは廃れるどころか勢いを増した。しかし、90年代は「エレキギター=ピロピロ」という考えが完全に陳腐化した時代だと思う。例えば、Radiohead、Oasis、Nirbanaなど、「ピロピロ」どころか、もはやギターソロさえほとんど必要としないバンドが脚光を浴びた。Rage Against The Mashine、Red Hot Chilli Peppersなど、HR/HMの影響を色濃く残すバンドに「ピロピロ」は残ったが、80年代のようにひたすらにピロピロし続けるようなアプローチは少なく、全体的にファンキーなリフを演奏するための道具としての性格が強い。
さて、hideの話に戻る。hideの遺作『Ja, Zoo』を聴くと、hideの死後に手を加えて制作された「Hurry Go Round」に「ピロピロ」があるのみで、他の曲にはほとんどギターソロらしきパートさえ存在しない。HR/HM系バンド所属のギタリストのソロアルバムにピロピロがないことがどれほど異質であるかは、他のHR/HM系ギタリストのソロアルバムを聴けばよくわかる。
90年代以降、Mr.Children、スピッツ、BUMP OF CHIKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONなどのピロピロしない(≒ギターヒーローのいない)ロックバンドが活躍し始めたこと思うと、HR/HM系バンドのリードギタリストでありながらも、90年代の非ピロピロの潮流に喰らい付こうとしたhideは、慧眼だったと言えるのではないだろうか。
Venus Peter 「Every Planets Son」コード進行 曲メモと感想
昔聴いていたものをふと思い出し、せっかくなのでコピーした。まさに渋谷系のサウンド。ベースラインが結構動く。オリジナルアルバムは廃盤っぽいので入手したい人はこちらから。「Every Planets Son」は、オリジナルアルバムでもベスト盤でも1曲目なので、作曲者にとっても会心の出来だったと思われる。
Deluxe Edition (The Best of V.P)
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Venus Peterを聴いてわかることは、フリッパーズギターが突然変異ではなく、やはり渋谷を中心とするコミュニティから誕生したことだろう。いかにバッハがバロック音楽に重要であろうとも、バッハを語ることがバロック音楽を語ることとイコールで結ばれないように、フリッパーズギターを語るだけで渋谷系は語れない。
特に記載していないが、A や Dの箇所でadd9やsus4にするとUKロック感が増すので、各自演奏の際は適当に混ぜると良い。
Verse1
A - F#m - D - A
Verse 2
D - G - A A onG# A on F#
D - A
※以降、半音上に転調して同様のコード進行。
イントロのフレーズはVerse1のコード進行のアルペジオ。ギターでは幾つかのポジションの可能性がある。Aを5フレット付近、F#mを2フレット付近、Dを5フレット付近で弾く方法もあるが、9~12フレット周辺で弾ききることもできる。色々な可能性が考えられるが、一応、自分の考えたポジショニングは、5フレットのAポジション、2フレットのF#mポジション、10フレットのDポジション。移動は多いがフィンガリングが簡単。
Verse2のポイントは、Gが登場する箇所でのAミクソリディアンへのモーダルインターチェンジ。Gリディアンを豪快に下降するベースラインが聞ける。キーセンターをミクソリディアンに変化させる手法は、60年代のBeatlesから、70年代のDavid Bowie、80年代のStone Roses、90年代のOasisに到るまで、ロックの基本中の基本。
個人的に、Verse2の2段目のDをDmに変化させると哀愁が増してよいと思った。 ファ#がファになることで、続くミに半音で接続することができる。声部を滑らかに繋げることで甘美な響きがする。
バークリーメソッドに従ってコードに対応するアヴァイラヴルノートスケールで記述しているが、実際のロックミュージシャンの多くは、スケールを中心に考えている気がする。スケールを1個飛ばしでコードを作って、コードの隙間はスケール残りの音で埋める。あまり上手く言語化できていない部分だが、コード進行をナンバーシステム的に捉え、アヴァイラヴルノートスケールを当てはめるという方法論は便利なのだが、音の内容を無視しがちなのであまりよろしくない。しかし、それ以外に上手く示す方法を知らないので、どうしてもバークリーメソッドに頼った記述になってしまう。
テニスコーツ 「Baibaba Bimba」コード進行・分析メモ(+インディポップの過去話)
普段これ系のインディポップはコピーしないが、手慰みに。
以下の循環を繰り返すシンプルな曲。昇るコード進行は神聖な響き。
Dadd9 - Dadd9 on F# - G - A7
そういえば、これ系を聴いていた時もあった。今は心が汚れてしまったので、過去のモノ全てに共通して見られる郷愁以上の何かを見出すことはできないけれども。「インディポップ」というジャンルを知らず、出会うもの全てが新鮮に見えた。Sarah Recordsとか、Rocketshipとかその周辺の再評価が進んだ辺り。
コード進行は、B♭ - E♭ の繰り返し。
やはり、add9の響きからインディポップの香りがする。
私がインディポップへの興味が薄れた理由は、音楽的には、sus4やadd9を使ったギターリフ、ガールズバンド、コーラスワークなどがパターン化されていることに気付き、面白みを感じなくなったことが大きい。また、音楽以外には、MVや歌詞で描写される「雑貨屋にいる女の子」的な価値観に馴染めなかったこともある。色あせたフィルム、自転車、風船、砂浜などが頻出だったように思う。
この曲のAメロも、Aadd9 - Dadd9 を繰り返すもの。
悪口になる手前でおしまい
Bjork「Human Behaviour」 分析メモ
一聴してわかる通り、Bjorkの曲は普通ではない。専門的な音楽知識がない人でも明らかに何かが違うことに気付くと思う。その直感は確かで、実際に分析をしててみると、不可思議な箇所が浮かび上がってくる。
最近、「Human Behaviour」を分析した。
ベースのループは、Am7(A、E、C、G)提示している。
曲のメロディは4度(D)を中心に据えて、♭6度の音が登場することから、現在のモードがAエオリアンであることがわかる。
しかし、 カウベルのような楽器がメジャーの音(C#)の音を鳴っているので、全体でエオリアン+M3度という奇妙なモードを構成している。M3度とm3度の共存はブルースの常套句だが、ブルース以外のジャンルではあまりお目にかかれない珍しい音使いである。
更に、サビでは次にB♭モードに移行する。
ベースは、Am7のベースラインをB♭に平行移動させたものをループする。マイナー系のループと考えれば良い。一方、メロディは明らかにメジャー系のそれで、M3度とM7度を含んでいる。つまり、複数のモードが同時に走る構造、ポリモーダルとなっている。さらに、そこにカウベルのような音でm3度とM3度のフレーズが重なる。M7度と♭7度、m3度とM3度の共存は非常に珍しい。いや、珍しいというより、自分はこの曲以外に知らないと言った方が正しい。
もう降参だよ...