捏造日記

電脳与太話

趣味的活動再開

約半年ほど、趣味的なものを完全に排除して就職活動とその準備に集中していました。主にプログラミングをしてアプリを開発していました。就職活動に本腰を入れたのは、新型コロナが猛威を奮っていた先月のことです。正直、退屈極まりない自己分析なるもので「自分」を探し、「自分」で自分を染め上げる作業には何の面白味も感じられませんでした。就職活動とはもはや演劇です。しかし、結果として幸運にも望外の結果を得ることができました。これからは労働者の端くれとして社会の片隅で生きてゆきます。

 

兎にも角にも、色々と一段落したので音楽系書籍を読むことを再開しました。1冊目は以下です。

ストリートの精霊たち

ストリートの精霊たち

  • 作者:川瀬 慈
  • 発売日: 2018/04/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 上記書籍著者の川瀬慈は、国立民族学博物館に所属する映像人類学者で、ラリべロッチというエチオピアの物乞いが奏でる音楽と、彼らの生活を克明に記録した極めて素晴らしい映像を発表しています。公式の紹介文の抜粋は以下です。

エチオピア高原北部を広範に移動する“ラリベロッチ(単数:ラリベラ)”と呼ばれる唄い手たちは、早朝に家の軒先で唄い、乞い、金や食物を受け取ると、その見返りとして人々に祝詞を与え、次の家へと去っていく。ラリベロッチのこうした活動は、瞽女(ごぜ)や春駒など、農作物の豊穣や家族の平穏を祈って各地を回ったという、わが国の門付(かどづけ)芸能者や、托鉢の僧侶の姿を思い起こさせる。

無料で公開されているので興味がある方は是非。

 

読書以外の音楽活動としては、労働の対価を得たらウードを始めてみようと思っています。ウードは西洋のヴァイオリンやギターなどの祖先にあたると言われている楽器です。知らない方はこの動画がおすすめです。半音(semitone)を基礎とする西洋楽器と異なり、半音より細かい微分音(microtone)を鳴らせるように設計されているウードの魅力がわかります。

 

その他、聴く絶対量が全く足りていませんが、比較的最近聴いたものの感想を少し書きます。

H.E.RはコンテンポラリーR&Bに属する音楽だと思うのですが、私自身がその周辺に明るくないので彼女がどの程度革新的かどうかは正直わかりません。しかし、感覚的には非常に良いものだと感じています。また、ソースはwikiですが、彼女の音楽の発言がとても良いです。

 "I feel like this is the era of the anti-star. I really just wanted it to be about the music, and get away from, 'Who is she with?' and 'What is she wearing?'"

H.E.R. - Wikipedia

 

次は、ルーマニアのはずれにある極めて優れた演奏技術を持つ音楽家が育つ村として有名な(?)なクレジャニの住人によって構成されるバンドです。

私は、放浪の民ロマの奏でる音楽の源流を探る以下の番組で知りました。父親が息子にバイオリンを指導するシーンがあり、楽譜を全く使用せずに感覚的に指導していたことが印象的でした。彼らは楽譜を読めないようです。

 

次です。流し見していたThundercatのインタビューで知りました。Snoop Dogの「G'z And Hustalz」のリフに元ネタがあり、Marcus Millerがベースを弾いているとは全く知りませんでした。

 

紹介する必要さえないEdith Piafです。明るい曲に聞こえますが、Aメロのメロディで長3度と短3度を半音でうろうろする不思議な曲です。ただ、そんなことよりも、彼女が声を発した瞬間から、あまりの歌の上手さに引きます。

 

去年のフジロック出演からゆるキャラ的人気を博している(?)平沢進です。個人的には、アニメへの関心から今敏に出会い、今敏ブログ経由で平沢御大に入りました。「P-Modelの人」という月並な印象しかありませんでしたが、音楽を聴いて驚かされました。

歌詞については言わずもがな、メロディについても、音楽的素養のない人でも口ずさめばその異様さに気付くのではないかと思います。従来の耳慣れた音楽のメロディと構造が根本的に異なるため、非常に歌いづらいはずです。多くの曲を分析したわけではありませんが、音楽的に少し踏み込んで言うと、調性を意図的に定位させないようにしているように思います。音程の跳躍が大きく、長調短調を複雑に織り交ぜ、半音を挟んだメロディが多い印象を受けます。平沢御大の音楽からは「従来とは違う何か」を模索する意志を感じます。

 

さて、趣味の充実は良いことですが、音楽は時間泥棒なので困ったものです。私生活では引越しに加え、仕事で使用するプログラミングで新しい言語の勉強も必要で、大忙しとなりそうです。どれも程々に細々と続けて行こうと思っています。