コード進行・分析メモ Velvet Underground 「After Hours」
Velvet Underground 「After Hours」
Velvet Underground は、音楽好き界隈の王様と言ってよい。
形式化された近年のロックにありがちな強烈なカタルシスを約束しない静謐な音楽は、飽きがくることがなく、噛むほどに味が染み出る。音楽好きの中で、果たして彼らを嫌いな人など存在するのだろうかとさえ思う。
骨となる部分はとてもシンプルな曲。Maureen Tuckerのヴォーカルが印象的な曲。
非常に良い意味で、Verse 2のリズムが崩れる箇所に時代を感じる。DTMが曲のパルスを支配するようになった現代では、こうした崩し方は中々お目にかかれない。
Key In B♭
Verse 1
B♭ Gm Cm F
Ⅰ - Ⅵm - Ⅱ - Ⅴ
言わずもがなのイチロクニーゴー。
ジャズとは違いトライアド中心なのでオシャレというよりは明るく、躍動感がある。
Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ のみで完結できるメロディなので、繰り返すことができる。
エンディングの以下の盛り上がりはその手法
I'd never have to see the day again
I'd never have to see the day again,
Once more
I'd never have to see the day again
Verse 2
Ⅰ- Ⅰ7- Ⅳ- Ⅳm
B♭ - B♭7 E♭ -E♭m
Ⅰ7が鳴る箇所はどこか何とも言えない不思議な感じがする。Ⅰ7だからと言って、全てがブルース進行的には響かない。
この進行は偶然、Mild High Club の「Skiptracing」でも見られた。彼らの場合は、Ⅳm をトニック ⅠM に解決せずに、Ⅲm に解決し、そのまま4度進行で下降していた。ちなみに、そのⅠ-Ⅳm - Ⅲm -Ⅵm- Ⅱm Ⅴ はフリッパーズギターの「Groove Tube」のサビの進行でもある。
Bridge
B♭から半音で下降したかと思えば、Dm と AM を繰り返す謎の進行。
あえて補足する必要もないとは思うけれど、ダイアトニックコード的に考えるのであればAMではなく、Am♭5が正解。
Dmの時は、♭6度 - ♭7度 - ♭3度
AM の時は、1度-2度-5度 のメロディ
AMはドミナントのように機能しているのかもしれない。
DmはⅥmのダイアトニックコードで、ダイアトニックスケール(この場合エオリアン)から外れた音は出てこないので、素直に調性内のコードと解釈してもよいかも。
後は、Ⅵm - Ⅱ - V を使ってB♭に戻ってくる力技。
このBridge こそがVelvet Undergroundが凡百のバンドとは異なるところかもしれない。マイナーコードをメジャー化することで調性を不安定にする手法はビートルズなど、「サイケデリックロック」と呼ばれるバンドの曲によく見られる。
まとめ・感想
原曲のみでは不安な箇所があったのでLive版などを参照しつつ分析した。楽しい雰囲気の曲なので家族で歌うと良いかもしれない。ただ、歌詞を読んでいないので恋人や子供と歌う内容かどうかはわからない。個人的には「Candy Says」、「Who Loves The Sun」、「Pale Blue Eyes」など、彼らの歌モノが好み。