捏造日記

電脳与太話

経過観察20210913 今週のコンテンツ

ほとんど仕事に集中していたので触れたコンテンツの絶対量は多くないが、ここ半年で気に入った or 気になったコンテンツを思いついた順番で書く。音楽、映画、漫画など色々とあると思う。

 

花とアリス殺人事件』 / 岩井俊二

30分ほど観た段階で傑作と確信した。ストーリー、カメラワークなど、素晴らしい点は多くあったが、何よりも背景の美しさに惹かれた。実写をコマ送りにしてアニメーションに起こし直すロトスコープという手法を使って作られた本作は、実写による写実の美しさと、アニメーションによる誇張の美しさを止揚した新しい表現を獲得しており、今まで自分が観てきたどのアニメーションのそれとも違っていた。単体であれば浮いてしまうような原色に近い赤、青、黄色、ピンクなどが背景に配置されていて、印象派の光の表現のような効果を生んでいる。コントロールできる情報量が多いというアニメーションの特徴を活かしつつ、実写でしかできない滑らかさや現実感を残す表現は奇跡だと思った。

 

視聴後、岩井俊二について調べていると、監督自身が光の表現について語っている動画を見つけた。高校大学と絵画を勉強しており、そこで構成された光の表現を学んだとのことだった。話を聞いていると、絵画(1コマ)を繋ぎ合わせるようにして映画を作っているのではないかと思った。


「街風」 / Jin Dogg

朝鮮人部落」という詞が含まれた曲が、再生数300万を超えていることに驚いた。「ロックのリアル」が前時代のクリシェに堕する中、「ヒップホップのリアル」が健在であることを感じさせられた。


 

『Meitei』 / Komachi

日本のトラックメイカー。この手の「実験音楽」は飽食気味だったが、このような可能性があることを知ると、飽食の原因が自分の怠惰にあったことを痛感する。


 

Les Paul & Mary Ford

新しい世代に可能性を感じつつも、古い音楽の魅力には争い難いものがある。

 

「スワニー河」 / 藤原義江

Spotify では最近、藤原義江など、日本で失われつつある古い音楽が充実し始めていてとても好ましい。


 

「ラジオJAG 」

最近始まったラジオ番組。再生は伸びていないが、DJ KRUSH が長年連れ添ってきたプロデューサーとキャリアを総括するなど、内容は充実しているので今後にも注目している。


 

『海、のち晴れ』 / 高見奈緒

丸善ジャケ買いした漫画。

青春の毒々しさと瑞瑞しさの両方を描く作者の人間観察の深さと、それを1巻完結で描き切る技量に舌を巻いた。まだあまり知名度が高くないようで残念だが、次の作品が出たら是非手に取りたい。

 

『千の夏と夢』/ 鯨庭

丸善ジャケ買いした漫画。短編集。さまざまな不条理に直面しながら、主人公が意志する瞬間と、その選択に心打たれた。全体を通して作者は、「人間は極めて愚かだが、それでも美しい瞬間はあり得る」ということを描きたいのではないかと感じた。

 

『姉の友人』 / ばったん

丸善ジャケ買いした漫画。理性と感情がないまぜになる恋愛の難しさを捉えた描写が印象に残っている。かつての恋人の幸福を祈りたい純粋な思いがあるが、過去の自分と彼(彼女)との間であり得た可能性に考えが及んだ途端、郷愁や嫉妬などの感情が複雑に絡み合った肯定的とも否定的とも言えない何かが喚起される。そんな読後感の作品。

 

 

『蝶のみちゆき』 / 高浜筧

江戸時代から第二次世界大戦後まで長崎に存在していた丸山遊郭を描いた作品。服装・美術・言葉遣いなどの風俗が丁寧に描かれていて、その点だけでも十分に楽しめる。本作を描く経緯が書かれている作者本人による後書きを読むとより楽しめる。作者はフランスでとても高く評価されているらしい。

 

ホドロフスキーのDUNE』

メビウスダン・オバノン、ダリ、ミック・ジャガー、ギーガーなど、各分野のビッグネームを創作の情熱のみで引き込んでゆくホドロフスキーを楽しむ作品。

余談だが、日本では、幻の DUNE の絵コンテを担当したメビウス作品の大半が絶版になっていることが本当に惜しい。

 

私達シアンの中 / 魚住英里奈

大森靖子系(?)は正直全く好みではないが、印象に残っている。この手の界隈に詳しくないから新鮮に感じるのか、作品自体が新鮮なのかは今の自分には判断がつかない。タイトルにあるシアンを少し調べたが、中毒を起こす毒物らしい。


 

『LIMBO』

ゲームはあまりに日常生活を侵食されるので基本的に避けているが、新世代のメディアとして無視することはできないので大傑作とされるものくらいは触れていきたいと思っている。『LIMBO』 は、Playdead というインディゲーム会社が開発した作品で、『ワンダと巨象』や 『ICO』 で知られる上田文人に絶賛されていたのでプレイしてみた。ストーリーを楽しむ作品というよりは、感じる作品。移動音やオブジェクトに触れた際の音響が素晴らしく、インタラクティヴな音響装置として楽しめた。

 

「Operation Sound Recovery」

ストリーミング全盛を迎えた現代において、「音楽好き」にとってより望ましい音楽管理とは何かを模索(?)する野心的(?)番組。ながら聞きするだけなので内容はほとんど忘れてしまうが、面白い番組だと感じている。


 

「nightmare」 / login

あまり調べていないが、Twitter によるとカリフォルニアに住んでいる若者らしい。

 

『bitzer』 という作品が Spotify で公開されているが、正直こちらはあまり自分の好みではなかった。

 

疲れたのでリストはここで終わり。雑多なリストを眺めながら、自分の好みに通底する何かを考えてみた。自分でもよく意味はわかっていないが、「意味はないが意図はある表現」が妙にしっくりきた。